☆ Little Honey ☆

□LH01
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さくらが目を開けると見知らぬ天井が視界に入った。

「また、違う場所…」

どうやら今度はどこかのベッドに寝かされているらしい。

目まぐるしく変わる状況に頭が付いて行かないせいかぼんやりとした意識でそれをとらえる。

「ガゥ」

「ニャー」

「!」

二つの異なる鳴き声が間近に聴こえ、身を起こして視線を巡らせてみるとベッドの上に座り込んだ自分に擦りよる様に二匹の小さな動物が寄って来た。

二匹とも猫の様な少し代わった形をしている。

「…あなたたちは?私…どうして…」

見慣れない二匹を眺めながら直前の出来事を思い返すと体が小さく震えた。

ガウガウ ニャーニャー

二匹の動物がまるで安心させるように鳴く。

さくらは自分の首元に手を当ててそこにリングがあるのを確かめた。

確かな手ごたえに安心して首にかかったチェーンを引きだして見る。

九代目から貰ったリングには小さなチェーンが巻かれていた。

先ほどの男の人が巻いたものだと気付く。

それを外そうと指を掛けると大きな手がそれを押さえた。

「ダメだよ」

「っ!」

低い声にさくらは思わずビックリして身を縮こまらせ顔を上げた。

声を出そうにも喉がカラカラして言葉が出てこず、じわりと涙が浮かびあがって来る。

「ええと…」

困ったように男は視線を泳がせて少し何か考えるようにしてから身を屈めるとさくらと視線を合わせた。

男の手はまださくらの手と重なっている。

ビクッっとさくらの体が再度震える。

「驚かせてごめんね。さくら、ちゃん…だよね?」

ゆっくりと怖がらせない様に話しているのがその口調からわかった。

さくらは警戒しつつも小さく頷いた。

「そんなに怯えないで?大丈夫、俺はツナ、沢田綱吉だよ」

「ツナ…くん?」

「うん」

「でも…」

さくらが信じられないといった視線を向けると相手はクスッと笑った。

嘲笑うようなそれではなく、どこか苦笑じみた笑いだった。

「君から見たら十年後の、だけどね」

「じゅう…ねんご?」

「そう、君からすればここは…今は未来に当たる。信じられないかもしれないけど本当だよ」

「………」

さくらは相手の顔や姿をマジマジと見つめた。

それに対してツナはニッコリと笑う。

確かにススキ色の髪やその穏やかな視線はツナのものに良く似ていた。

声も、少し低くなっているけれどどこか面影を残している。

「さっきは急に手荒なことして悪かったね。これがさくらちゃんにとって大事な物だっていうのはわかってる。だけど今このリングに巻かれているチェーンはこの時代にいる間は付けていて欲しいんだ。理由は話すと長くなっちゃうんだけど、君を護るために必要なんだ…わかって貰える?」

相手がこのリングをさくらから取り上げるつもりが無い事がわかり、さくらはコクンと小さく頷いた。

それを確認してツナは重ねていた手を離す。

急に離れた温もりにさくらはなんとも言えない寂しさを覚えてさくらはギュッと手を握り締めた。

ガゥ…と小さく鳴いて黄色い方の動物がツナを見上げるとツナはそのコを抱え上げてベッドサイドに腰を下ろす。

「ここに来る前に何があったか覚えている?ええと、未来に来る前って事だけど」

小さな動物の頭を撫でながらツナは穏やかに微笑み、優しく問いかけた。

さくらは思い出しながらここに来るまでの事をゆっくりと言葉に紡ぐ。

「…えっとね?私とお兄ちゃんがツナくんの部屋に遊びに来ていて…そうしたらランボくんが、リボーンくんと喧嘩して飛び込んで来て…駆け回る二人を止めたんだけどランボくん泣いちゃって」

「うん」

「そうしたらランボくんが頭から大きな筒みたいのを取り出して、でも取り出した時にそれを壁にゴンッってぶつけちゃってその衝撃でそこから飛び出した何かが私にぶつかったの」

やっぱりと言ってツナは額を抑えてため息をついた。

「あのアホ牛が…」

小さく呟かれた言葉は低く鋭かったがさくらの耳には入らなかった。

ツナは一つ深呼吸をするとゆっくりと話し出す。

「そう…そのランボの十年バズーカのせいで君は十年後の未来に来てしまったんだ」

「十年バズーカ?」

「そう、バズーカを受けたせいで十年後の君…この時代のさくらと君が入れ替わってしまったんだ」

簡単に人差し指を立てた両手を交差させるなどして説明をする。

一通り話し終わったあと、さくらは再度確かめるようにツナを見た。
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