★ Diamond Honey ★
□Diamond Honey23
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ジャリッっと踏み出した足音がやけに大きく聞こえた。
ツナはゴクリと唾を飲み込む。
「な、なんでスクアーロがここに…?」
「リング争奪戦は明日じゃなかったか?」
ディーノは相手を見据えて尋ねた。
その言葉を無視し、スクアーロは厳しい表情で話し出す。
「跳ね馬、貴様に聞きたいことがある」
「へぇ?…ちょうど良かった、俺もお前に聞きたいことがあるんだ」
「…あの娘、何の病気だ?」
スクアーロの言葉にディーノとツナは顔色を変えた。
あの娘と言うのは考えるまでもない。
「おいっ!さくらが発作を起こしたのか?」
「…ボンゴレの湖畔のアジトであの娘とお前が一緒に居たことは調べてある。医療班が常駐していたこともな…処方箋を寄こせ」
「ダメだ!さくらを渡せ!俺たちで治療する、ずっと診てきたんだ」
「処方箋を出せ」
「頼むスクアーロ…発作が起きたんだろ?発作の具合によってはさくらは死ぬぞ?」
「何ぃ?う゛ぉぉぉぃ!それはどういうことだ!」
「時間がない、発作を起こしたのはいつだ?」
「…おそらく昨夜だ、医者に見せて手を打ったが熱が高く発作が治まらねぇ」
「そんなっ」
二人の言い合いを聞いていたツナが悲痛の叫びをあげた。
握り締めた拳がワナワナと震えていく、嫌な予感が当たってしまった。
誰も知る人のいないところでさくらが苦しんでいる。
「お願いします!さくらちゃんを解放してくださいっ!」
ツナは必死にスクアーロへと訴えた。
「頼むスクアーロ!さくらを連れて来れ無いなら俺たちが迎えに行く!手遅れに成る前になんとかしねぇと!」
「その様子じゃ…嘘じゃねぇみてぇだな。クソッ…金剛石の力が目覚める前に姫をくたばらせてたまるか」
スクアーロが吐き捨てるように言ってディーノに背を向ける。
それを肯定ととったディーノとツナは彼の後を追った。
その途中、ディーノは先ほど別れたばかりの部下に電話をかける。
「ロマーリオ!緊急事態だ、さくらの薬を用意しておけ!場所はまた連絡する。山本にも声をかけておいてくれ」
携帯で短くそれだけ伝えると部下の戸惑う声を無視して電話を切る。
二人はスクアーロの後を追ってヴァリアーの屋敷へと走った。
辿り着いた先は並盛のはずれにある古い洋館。
めくらましの術でもかけてあるのか言われなければ通り過ぎてしまうところだった。
「いいか、他の奴らに見つかるとやっかいだ。絶対に悟られるな」
そう言ってスクアーロは裏口からツナたちを侵入させた。
途中まで案内すると、警備の目を逸らすためにと一旦別行動を取る。
その背を見送りながらスクアーロが今、仲間を裏切ってくれている事にツナは罪悪感を抱いていた。
俺たちの為じゃなくさくらちゃんの為だってのはわかっているけど
大丈夫なのかな…もしバレた時、裏切り者になってしまったりしないかな。
心配していると隣を走るディーノがクシャリとツナの頭を撫でた。
「ツナ、今は余計な事は考えるな」
「…はい」
そうだ、今はまずさくらちゃんを助け出すことが先決だ。
さくらちゃんすぐに助けに行くからもう少しだけ待ってて!
小さな決意を胸に前を見据える。
その時、指輪が一瞬だけ淡く光った事にツナは気付かずにいた。
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横になった時、首から下げた指輪が目の前に転がり出てしまった。
元に戻そうと手を伸ばすと一瞬、ぼんやりと指輪が光ったような気がした。
瞬きをしてもう一度見てみると既に光りは消え失せている。
見間違いかもしれないと思いつつ指輪を手に取って眺めてみた。
みんなで街にお出かけしてスクアーロさんの襲撃にあった日の夜。
見知らぬ病院で目を覚ました私の側に、何故かツナくんのお父さんがいた。
イタリアで九代目と療養生活をしていた時、何度か訪ねて来てくれていた人だったけどこの時までツナくんのお父さんだって事は知らなくてすごく驚いた。
でもその優しい目や表情は確かにツナくんと同じだと感じる。
ツナくんのお父さん、家光さんは私に話があると言った。
それは九代目から貰ったお守りの指輪に関わること。
私の中には少し変わった力があるらしい、でもそれはまだ眠ったままの力でまだ私には自覚すらなかった。
でもその話を聞いて思い出した事がある。
何度か夢であったあの人は私の力を知っているようだった。
その時は意味がわからなかったけれど家光さんの話を聞いて何かが私の中でカチリと音を立てて繋がった。
そして今朝見た夢…
私がここに連れて来られた理由、それこそ夢みたいな話がどうやら本当で
私の存在がここの人たちとツナくんの将来に関わるらしい。
そんな大した人間じゃないのにな…私なんて
病弱で、お兄ちゃんたちにいつも護られて…みんなの優しさに甘えて
リボーンくんは私に自信を持てって言ってくれた。
あの時勇気づけられた言葉は学校で上級生に責められた言葉から立直らせてくれた。
でも今は…
「どうしたらいいか、わからないよ」
擦れた声が虚しく消えて行く。
息苦しくて途切れそうになる意識。
滲む視界に気持ちが負けそうになってくる。
「みんな心配してる、かな」
いつも一人だった。
学校は休みがちで友達もいなくて、お兄ちゃんだけが側にいてくれた。
でもツナくんや隼人くんが友達になってくれて…
それからいろんな人と知り合えて
いつしか周りに沢山の人がいてくれるようになった。
私の具合が悪くても責めたりしないで一緒に居てくれる優しい人たち。
「…っ」
みんなの笑顔を想い浮かべたら苦しさとは違う涙が溢れてきた。
戻りたい、あの場所に
一緒にいたい、みんなと…
心からそう願い、首元のリングを引き寄せてギュッと握りしめた。
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