★ Diamond Honey ★

□Diamond Honey8.5
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「ただいまーお家」

親父が鍵を開けたあと、一番に扉を開くさくら。

後ろには俺と親父がいるから中には誰もいないけどさくらはきっと“家”に声をかけたんだ。

何か月も離れていた家にやっと帰って来たんだもんな。

「おかえりさくら」

荷物を手に後ろから声をかけ中に入る。

親父も続いて扉をくぐり、家に家族が揃った瞬間だった。

「今日はさくらの好きなものいっぺぇ作ってやっからな」

「本当!私ちらし寿司がいいなぁ」

「よっしゃ任しとけ!武手伝えよ?」

「ああ」

「私もお手伝いするー」

「疲れてないのか?」

「うん!もう平気だもん。お兄ちゃんと一緒にやる」

「そっか、じゃ頼むな」

「うんっ」

家族みんなで料理をして、ご飯を食べる。

やっぱり家族が揃うって良いよな。




あの花火大会の日に発作を起こしてしまったさくらだったけど

基礎状態もそれまでは安定していたこともあり、もともと出ていた退院予定を少し伸ばすだけですんだ。

これから少しずつ体力をつけていくというのが今後の課題だ。

もちろん定期的な通院は欠かせないし薬の量もかなりあるけど

病院の外での生活はさくらや俺たちにとって嬉しいことこの上ない。

「さくら、明後日はツナくんのところだっけか?」

親父が思い出したように言った。

そう、さくらは明後日ツナん家に泊まりに行くことになっている。

「うん、明日はお家でゆっくりして明後日はお泊りに行くの」

「武は行かねーのか?」

「昼間一緒に行くけど夜は帰ってくるよ。その次の日は朝から部活あるし」

「そうか…一人で泊まりなんて大丈夫か?」

さくらにとって病院以外初めてのお泊りだし親父が心配そうにつぶやく。

気持ちがわかる分、俺が安心させるように説明した。

「ツナのお袋さんが是非って言ってくれてるし、ツナの家だから大丈夫だろ?さくらの気が進まないなら辞めとくけど」

「私行く!行きたい!」

「おねしょとかすんなよ?」

「しないもん!お父さんの意地悪」

「はははっ」

「まぁ、楽しんで来いや」

「うんっ」

さくらはプクッと頬を膨らませたかと思うと今度は満面の笑みを浮かべてうなずいた。

表情がくるくる変わるのは元気な証拠だ。

家の中がパッと明るくなった気がした。
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