★ Diamond Honey ★

□Diamond Honey11
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夕方に外に出るのはいつもダメって言われていたけど

今日ばかりはお父さんも特別にオッケーを出してくれた。

オレンジ色の空の下、向かうのはお兄ちゃんのいる並盛神社。

近づくにつれてだんだんと人の数が増していく。

今日は神社で夏祭りが行われていた。

提灯のあかりや屋台のお店が並ぶ境内に足を踏み入れると

賑やかな喧騒がわぁっと押し寄せてきた。

ワクワクして足取りも軽く近くのお店の通りを進んでいると見知った顔のいる屋台を見つけた。

「ツナくん」

「さくらちゃん!」

声をかけると店番をしていたツナくんが驚いて顔を上げる。

奥で作業をしていた隼人くんも私に気づいて振り返ってくれた。

「えへへ、お兄ちゃんたちお店やるって言うから見に来ちゃった」

駆け寄って屋台を見れば“チョコバナナ”と書いてあった。

カウンターにいくつか割りばしの刺さったバナナが置かれている。

「よぉさくら、一人で来たのか?」

「うん、お兄ちゃんは?」

屋台にはツナくんと隼人くんの姿しかない。

確かお兄ちゃんも一緒だったと思うんだけど…。

「今ちょうど出てるんだけどすぐに戻るよ」

「そっか、じゃ…ちょっと見て廻ってからまた来るね」

「人が多いから気をつけてね」

「ありがとうツナくん」

「ちょっと待て、さくら」

「うん?」

隼人くんの声に立ち去ろうとした足を止めた。

振り返ると目の前に一本のチョコバナナ。

綺麗にチョコスプレーも飾られてとっても美味しそう。

「これ…やる」

ぶっきらぼうに言ってグイッと差し出されたチョコバナナをつい受け取ってしまった。

売り物なのにいいのかな?

「ああっ俺も今渡そうと思ったのに」

ツナくんが残念そうに呻く。

その手にはピンクのチョコが塗られたチョコバナナ。

「じゅ、十代目もッスか!…よしっさくら二本持って行け」

「えっと…いいの?」

「あっでもさくらちゃん無理しないて良いからね」

「ううん、嬉しい。ありがとね」

両手に一つずつ持って二人にお礼を言った。

優しく笑い返してくれて私の気持ちもほっこり暖かくなる。

「二人とも頑張ってね」

「うん、ありがとう」

「任せとけって」

お兄ちゃんが戻った頃にまた行こうっと。

弾む足取りでその場を後にすると

「「チョコバナナくださーい」」

重なった可愛い声が背後に聞こえた。
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