パラレルNovel
□妹のキモチ
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エピソード1【一期一会】
突然降りだした雨を呆然と佇んで眺めていた。
「寄り道なんかするんじゃなかった・・・」
呟いてももはや後の祭り。
お店の入り口にはミサキと同じ様に足止めされた人や雨宿りに来た人などが集まって来ている。
「・・・うんごめん、じゃ待ってるから」
すぐ背後から声がして思わず振り向けば携帯で話す青年がいた。
華奢で儚げな雰囲気のとても綺麗な顔をした男の人。
なぜか目が話せなくて青年が電話を切った後もミサキが見つめたままでいるとその視線に気付いたのか青年がこちらに目を向けた。
「すごい雨だね」
不意に声をかけられハッと我に返り、改めて目が合うと青年はニコッと笑みを浮かべる。
とても優しそうな人だとミサキは思った。
「そう・・・ですね」
らしくない位たとたどしくミサキは返事を返す。
変な子だと思われただろうと危惧したが青年は特に気にした様子はなかった。
「その制服・・・君、セント・リーフの生徒だよね?懐かしいな」
「・・・卒業生、ですか?」
「うん、去年まで通っていたんだよ、君は新入生?」
「はい」
懐かしそうに目を細める青年は今は近くの大学に通っているらしい。
なんとはなしに会話は続いていく。
「学校は楽しい?」
不意にかけられた問いにミサキは答えを一瞬ためらった。
だがすぐに気をとり直し答える。
「・・・普通です」
もっとましな答えはなかったのかと後悔したが実際そう思ってるのだから仕方がない。
「そう・・・君って面白いね」
そう言って青年がクスリと笑ったのがなんだか面白くなくてミサキは顔をしかめた。
思わずそのままつっけんどんな質問をしてしまう。
「あなたは楽しかったんですか?その・・・セント・リーフにいる時ですけど」
「ん?う〜んそうだね、三年生の時は特に楽しかったかな」
「去年・・・の事ですか?」
「そう、後輩にとても努力家な子がいてね。いつも前向きで一生懸命で・・・彼女からたくさん勇気を貰ったんだ。だからとても楽しい時間を過ごせたよ」
降りしきる雨のどこか遠くを見る青年の顔はどこか切なく消えてしまいそうな程だった。
「その人は恋人・・・だったんですか?」
聞いてはいけないと思いつつミサキは好奇心から聞かずにはいられなかった。
不躾な質問にも関わらず青年はまた柔らかく微笑んだ。
「ふふっ・・・だったら良かったかもね。でも彼女は大切な友人だよ、今もね」
その笑顔にミサキは聞いてしまった事を後悔する。
高校三年間で一番楽しかった時間にいた相手だ、好きだったのかもしれない。
「そうですか・・・」
謝るのも何か失礼な気がしてミサキはそう言うのが精一杯だった。
「君は大切な友達っている?」
今度は青年が問い掛ける。
ミサキはなんでもない事の様に答えた。
「友達なんて別に必要ないですから」
「必要ない…なんて事はないと思うけどな」
ミサキの答えに青年は驚いた風もなく返す。
それはどこかミサキをムキにさせた。