パラレルNovel
□妹のキモチ
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「別に学校なんて勉強しに行くだけの場でしょう?友達なんて馴れ合うだけだし」
「君は勉強が好き?」
「特別好きな訳じゃないけど勉強しなきゃパパの後継いでお仕事するのに困ると思うから・・・」
「偉いね、後を継ぐってことは独りっ子なの?それとも一番上かな?」
「どっちも違います、兄がいるんですけど兄は自分のやりたい事を見つけていてパパの会社を継ぐつもりはないと思うから・・・」
「ふぅん、君はそれで良いの?」
「さっきから質問ばっかりですね」
ミサキにフッと笑みが零れた。
青年の説教するでも同情するでもない淡々とした態度にムキになるのが馬鹿らしくなってきたのだ。
その反面、見ず知らずの相手に対してこんなにいろいろ話してしまう自分を不思議にも思っていた。
「兄には夢を叶えて欲しいから。でも誰かがパパの後を継がなくちゃいけないし、あたしは特にやりたい事もないから・・・良いんです」
いつの間にか当たり前にそうだと思っていた。
両親すらそのつもりでいる。
「・・・君は優しいね」
ミサキは青年を正面から見据えた。
それはかけられた言葉こそが優しくて胸の奥にジンと響いたから。
直ぐに言葉を紡ぐ事が出来ない。
「・・・・・・」
「どうかした?」
「そんな風に言われたの…初めてだから」
「そう?君は家族思いの優しい子だよ、だから・・・友達は必要ないなんて思わないで欲しいな。きっとそんな優しい君と友達になりたいって思ってる人もいると思うから」
「そんな人・・・っ」
言いかけてとある人物の顔が浮かんだ。
ミサキがどんなに素っ気なくしても友達気取りで声をかけてくる年上の癖に年上に見えないあの人。
「思い当たる人がいるみたいだね」
青年は楽しそうに目を細めた。
ミサキは慌てて否定する。
「ち、違います!あの人は敵ですから!」
「敵?・・・やっぱり君は面白いね。それと、どこか僕の友達に似てるよ」
「え?」
「頑なで、素直じゃないけど本当はとっても優しさを秘めてるところとか・・・ね。ちょうど今待ち合わせして・・・」
「神城!」
二人の背後から長身の男が走り寄って来た。
その姿にミサキは目を見張る。
スレンダーな体にバランス良く整った顔立ちは正に美形と言う言葉がピッタリだった。
「蓮」
「すまない、待たせたな」
蓮と呼ばれた美形は息を切らせて神城と呼んだ青年に駆け寄る。
「大丈夫。楽しいおしゃべりをしていたからあっと言う間だったし、ね?」
そう言うと神城はミサキに笑みを向ける。
つられて蓮もミサキに視線を寄せたのでミサキはペコリと小さく頭を下げた。
「それにちょうど雨も上がったみたいだし」
神城の声に空を見上げればいつの間にか雨は止んで薄日がさしていた。
雨宿りをしていた人たちも既にまばらになっている。
そんなに話しに夢中になっていたのだろうか。