パラレルNovel
□小さな出会い
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「ヒトミが喜んでくれるとお兄ちゃんも嬉しいよ」
「今度はパパとママも来れるといいね」
今は仕事中であろう両親を思い浮かべてヒトミは言った。
鷹士は本当は寂しいはずなのに明るく振る舞うヒトミの優しさに目を細めた。
「そうだな、そうしたら二人で案内してやろうな」
「うんっ!・・・あっ」
前方に大きな観覧車を発見するとヒトミは鷹士の手を離して駆け出した。
観覧車を指差したままくるりと振り返る。
「お兄ちゃん次あれ!あれ乗ろう!」
「ヒトミ、ちゃんと前見て歩かないと危ないぞ」
「きゃっ」
「ヒトミ!」
注意したもののまんまとヒトミは段差に躓き思いきり転んでしまった。
鷹士は慌ててヒトミに駆け寄る。
「ヒトミ大丈夫か?」
「うん・・・でも擦りむいちゃった」
「うわっ大変だ!血が出てるじゃないか!!」
ヒトミが涙目で膝小僧をかかえて見せると傷口を見て鷹士は顔色を変えた。
当のヒトミよりもアタフタと慌てだす。
鷹士はすばやくヒトミを抱え上げると近くのベンチに下ろしてあたりを見回した。
「ヒトミ、兄ちゃんちょっとハンカチ濡らして来るからここでジッとしてるんだぞ?」
「うん・・・」
転んだ事によりすっかりテンションが落ちたヒトミは小さく頷く。
鷹士はヒトミの頭を撫でるとハンカチを握り締め水場を探しに行った。
鷹士が行ってしまうとヒトミはグイッと滲んだ涙を拭った。
調子に乗って兄に迷惑をかけてしまい、幼心にも悔しさが溢れてくる。
賑やかな声に顔を上げれば先日オープンしたばかりのクリスタルランドは親子連れの姿が多く見られた。
本当は今日だって家族4人で来るはずだったのだ、だけど急な仕事が入り両親が行けなくなってしまった。
聞き分けの良いヒトミは両親を攻めたりわがままを言ったりはしなかったがやはり楽しみにしてた分落ち込んでいて、その姿を見た鷹士が二人で行こうと言い出したのだ。
中学生と小学生で行くことに心配性の両親は反対したが鷹士が大丈夫だからと一生懸命説き伏せてくれた。
ヒトミはそれを知っている。
そうまでして連れて来てくれた兄に迷惑をかけてしまった事が苦しかった。
不意に一人でいる寂しさに駆られ鷹士が早く戻ってこないかと辺りに目を凝らした。
だが視界に入ったのはスーツ姿の見知らぬ男達だった。
男達はヒトミの前に足を止めるとジッと上から見下ろしてくる。
嫌な予感がした。