★ Diamond Honey ★

□Diamond Honey6
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柔らかそうな髪にスッと櫛が入る。

器用な手つきで獄寺くんはさくらちゃんの髪の上半分をまとめてゴムで括った。

わぁ…獄寺くん、グッジョブ!

さらに可愛くなったよ。

「ありがと隼人くん」

「おう。行きましょうか十代目」

「あ、うん」

あれ…なんかちょっと今寂しかったな。

いや、気にしない気にしない。

「さくらちゃん手繋いで行こう」

「うん。あ、待って待って」

さくらちゃんはいつものポシェットを肩にかけて準備を完成する。

そのポシェットには相変わらずウサギのぬいぐるみが付いていてちょっと嬉しかった。

小さな手を引いてナースステーションに寄ると今から出かけてくると声をかける。

担当の看護師さんから緊急時用の病院の電話番号のメモを受取り、それは俺が預かるこにした。

直前に飲んだ薬が美味しくなかったからとさくらちゃんは出る前に自販機でリンゴジュースを買って

いざ、外の世界へ。



病院の外に出るのが久しぶりのさくらちゃんはすごくウキウキして楽しそうだ。

そこへ俺と獄寺くんの考えたサプライズを実行に移すことにする。

「あれ?ツナくん、並盛中ってこっちだっけ?」

「あーうん、ちょっと寄り道していこうかなって」

「まぁ気にすんなよ」

「?」

俺たち二人に挟まれた形で間を歩くさくらちゃん。

その視界に“竹寿司”ののれんが見えてきた。

「ここ…」

入口でピタリと足をとめ、そっとさくらちゃんの背中を促す。

「あんまり時間がないから顔を見るだけになっちゃうけど」

「ほら、さっさと行って声かけて来い」

「うんっ…ありがとう」


*・*・*・*・*・*


二人に背中を押され、さくらは涙目になりながらも店の扉を開く。

そう、帰りたかった自分の家の扉を。

「お父さん」

「っ…さくら?」

控えめに声をかけたさくらに父・山本剛は驚いてカウンターから飛び出してきた。

そしてさくらは父親の胸に飛び込む。

ギュッとしがみ付く傍ら目の端に見える店内や店の匂いに懐かしさが込み上げてきた。

「ツナくんと隼人くんがね、連れて来てくれたの」

めいっぱい嬉しそうに話すさくら。

その頭を父は優しく撫でてくれた。

「ああ…今日だっけか武の練習見に行くの」

「うん、だからあんまり時間ないんだけど」

「ありがとな寄ってくれて。最近忙しくてあんまり行けてなくて悪かったな」

「ううん、そんなことないよ。いつも時間作って来てくれてありがとう」

「ツナくんたち待ってるんだろ?もう行った行った。みんなによろしくな」

「うん、今度はちゃんと“帰って”くるからね」

「ああ、気をつけてな」

名残惜しむように熱い抱擁を交わし

先ほど閉じたばかりの扉をまた開いた。


*・*・*・*・*・*
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