めいん

□プロローグ
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誇らしげな薄紅色の蕾が風にさらわれ、桜になりかけてゆく頃。

俺たちは中学を卒業し、それぞれの進路を描きながらも新たな場所へと旅立った。



「旅立つ」というと美談のようだが、もちろん自らが望まない道に歩んだ奴もいるし、
他人に決められたレールを走っていくであろう奴もいる。
それに長年付き合ってきた友達とも離れなければならない。
仲がよくても時が経てば、
それぞれに新たな友達ができて疎遠になるのはある意味自然の摂理。

繋がりの薄い友達なんかはすぐに疎遠になってしまうのだろう。


そう、必ずしも「旅立つ」ことがいいわけではないのだ。


かくいう俺は、幸か不幸か自分で望んで決めた道へスタートすることができ、
仲のいい友達とも同じ高校へ行くことになった。


高校の名は嘉応高等学校。


男子校である永徳高等学校と女子校である命禄女学院を提携校にもち、
それなりに規模の大きな共学の都立校である。

成績は中の上。校内の環境も良く、進学率も悪いわけではない。
むしろ市の学校調査には進学率のいい学校として割りと上位に記されている。



ただ一つ難を挙げるとすれば、通学経路が長いという点。
自然も多く静寂が取り柄の環境に位置しているためか、
駅やバス停から学校までの距離がやたら長い。
提携校の二校は嘉応高校から少し離れた市街地に隣接して建っており駅からも近いのだが、
こちらは小高い丘の上に位置し、市街地からも離れている。


いっそのこと郊外と言ったほうが適切なのでは、
と思うほどに静か過ぎるほど静かな場所なのだ。



そんな学校でどんな生活をしていくのか、
どんなことができるのか、どんな友達ができるのか。


様々なことに思いを馳せながら、不安よりも期待の方が勝るその門出に立ち、
幸先のいいスタートが誰よりもきれるように 願う。

この話は、恐らくそういう一般的な願いを少なくとも持った俺――逆神歩と、
アクシデントを常に持ち込む双子――畑仲柳哉と畑仲璃津、
高校で出会った藤本春乃のちょっとした高校生物語である。






以下ちょっとした捕捉↓

・永徳高等学校について
生徒会が二つに別れて公平な行事と学校の秩序を守っている特殊な男子校。
第一生徒会のほうが上の機関で、別名「太陽委員」。
第二生徒会は第一の補佐で、別名「月光委員」。
それぞれに生徒会長がいる。
すぐ近くに提携校である命禄女学院が位置しており、
少し離れた場所に嘉応高等学校がある。
成績は中の上。
じつは割と頭のいい学校。



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