Tales of Colloseum
□1,I want to be a "hero" 前編
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「よし行くぜ!!」
カイルは背中の鞘から素早く引き抜き、一気にルカに向かって走り出す。そして、走る力を剣に乗せ一気に剣を振り下ろした。
ルカはこの攻撃に反応し、剣でカイルの一撃を防ぐ。
「まだだ!!」
カイルはルカのガードの上から強引に斬り続ける。ギン、ギン、ギン、カイルの剣とルカの剣が二人寄り添うようにして、金属音を奏でる。
「……らなきゃ…やられる。」
!?少年の呟き声がふと耳に入ってきた。次の瞬間、カイルの剣撃に合わせてルカが剣を振り下ろした。
「ぐわぁ。」
カイルはルカの剣撃に押される形で後退した。いきなりの反撃というのもあったが、相手の大剣の威力は想像していたよりも重く、それを肌で感じた。
「やっぱり、あの大剣相手に接近戦は不利だ…ならば。」
カイルは数回バックステップした後、即座に晶術の詠唱に入った。相手に動きはない…いける!
「フレイムドライブ!!」
カイルから放たれた三つの火球はルカに向かって飛んでいく。ルカもこれを防ごうとするが防ぎきれず、火球がルカの服を燃やす。
そして怯んだ隙を見てカイルは再び一気に間合いを詰める。そこからまた剣を振るった。
「人を傷つけることなんか…やだよ…」
ルカは小さく呟いた。正直ルカはこの大会、あまり乗り気ではなかったが、イリアとスパーダが
「願い事かぁ〜私、私お金がたんまり欲しいんだけど、ルカ君なら出来るよね?」
「願い事か。オレが出られないのは残念だが、ルカ、絶対に勝てよ!!」
元々自己主張の弱いルカがこの二人の要求を断れるはずも無かった。
こうして大会に出場することになったルカだが、正直言って気が引ける。
ルカ自身もあの旅の中で人と戦ったことはある……でもそれは決して好んで戦ったわけではなかった。
そんな自分が特に目的も無く、しかも他人の願いを叶えるためだけに戦うということはどうしてもできなかった。
「人を傷つけるのもやだけど、痛いのもやだよ……。」
心の中で再び呟く。前世があの名将アスラだったとは思えない情け無いものだった。
旅をする中で学んだやらなければ
やられる≠ニいう言葉。最初は恐かったが
次第に慣れてきた。だが、今は状況は違っていた。
「やっぱり間違ってるよ!!」
ルカが口に出した。カイルの剣とルカの剣が競り合っている状態になった。
「ただ願い事のためだけに戦うなんて絶対に間違っているよ。」
ルカがカイルに向かって言い放った。
「オレは願い事のためだけに戦っているわけじゃない!!オレは父さんと…父さんと戦うためにここに居るんだ!!」
「それだったら、ここで戦う必要なんて無いじゃないか。」
「ここじゃなきゃあダメなんだよ!」
「どうして?」
「君には関係ない!!」
カイルは剣先を一瞬翻す。
「!?」
ルカがカイルの返しについていけず、バランスを崩す。そしてカイルはルカの剣に向かって斬撃を繰り出す。
「あっ!!」
ルカの手から剣が放れ、地面に突き刺さった。そしてカイルは、そのまま自分の剣をルカに突きつける。