Tales of Colloseum

□3.Readiness
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「うおおおおおおおおりゃあ!!!」

ロイドは迷いなく斬撃を振るう。
先ほどの剣筋とは天と地ほども違う、かといってやけになったわけではない。
必要に応じて、退いたりフェイントなども織り交ぜたりしながら攻撃していた。
天使の体は痛みを感じない、普通なら動けない傷を負っていたしても普段通り、
いや天使の能力が加算されさらに早く動くことができる。
その天使の力を持ってしてもクレスのガードをなかなか崩すことができない。
クレスはロイドのスピードを見るや即座に不利と判断し、守りを固めた。当然守ってばかりではなくたまに攻撃したりする。
痛みは感じないとはいえ、ダメージは確実に蓄積されてしまう。
そういった面ではこちらが不利な状況に変わりなかった。
あと一撃まともにもらってしまえば、天使の体とはいえ無事だという保障はない……そのことは百も承知であった。

「はあああああああ!!!」

ロイドが再び剣を薙ぐ。
その一撃はかつてともに旅をしたプレセアの一撃にも匹敵するものであった。
しかし、それでもガードを崩せない。

「やはり、あの盾か………。」

自分の攻撃をことごとく跳ね返したその盾……普通の金属の盾ならとっくの昔に壊れているはずなのに
その盾はまるで要塞のように立ちはだかる。表面に傷が入っているもののまだ、壊れるには程遠い。
自分のスタイルは、二刀流の手数にエクスフィアによる身体能力の強化を足したものである。
そもそも二本の剣で攻撃していれば、普通の一刀流の剣士では防ぎきれない。
そういった意味で生まれた剣術だが、目の前の相手も剣と盾による二刀剣術だ。
本来、盾は防ぐ為だけのものだがその盾も攻撃に加えてくる……そして、本来の持ち味である防御も最大限に使う。
さらに、盾で防ぎきれない攻撃と判断するともうひとつの武器である剣でこれを防ぐ。
組み合わせや剣術は違えど、自分と相手は同じスタイルの剣士であるのだ。
スタイルの同じものが闘うときに重要になってくるのは、その個々に持っているポテンシャルである。
今、自分は天使化の効果により、スピードとパワーはこちらが一枚上手だ、だが技術的な面でいえば相手の方が二枚上手だ。
それは、闘っているなかでロイドは感じることができた。
クレスはおそらく幼いころからきちんとした剣術を学び、日々鍛練を積んできたのだろう。まさに、自分とは正反対と言っていいほどである。

「くっ、どうする……このままじゃ…!?」

「獅子戦吼!!!!」

クレスの盾から再び獅子が火を噴く。
ロイドはこれを後ろへ飛んでダメージを外へと逃がす。

盾を壊すにしてもそれ相応の威力の技を入れなければいけない……その技が……あった。
今まで頭に血が上っていて気づかなったことが、次々と出てくる。
でもあれは隙がでかい………普通にも撃っても当らない…………。

考えろ……集中しろ……

今までの戦い……ここだけでないシルヴァラントやテセアラでの闘い……思い出せ……
今まで、点でしかなかったものが線として繋がり一つの情景を頭の中に作り出す………。

考えろ……集中しろ……

イメージするんだ……自分の動きそして流れを……あの技を入れるために俺は……
全ての情報が繋がりある光景を映すそれは俺が勝つための道筋……
隙をなくすためにはあの技からの連携……
そしてその技を確実に使うためには…………

よし、これならいける。
ロイドは改めて剣を強く握りなおす。
今までのなかで一番頭を回転させたかもしれない、イセリアでの定期テスト……パルマコスたでのテストなどとは比べものにならない……。
やらなきゃやられる……一歩でも少しでも間違えれば終わってしまう……負けても死にはしないが俺には分かる。
この勝負は負けてはいけないんだ。自分の覚悟を示す闘いであり、これからの道筋にも影響してくる。
そして、何より目の前の少年クレス・アルべインを超えることができれば自分の理想に近づくことができるそう感じたからだ。

やるしかない……どんなに無茶でもやるしかないんだ!!

一撃目、左手のフランベルジュが唸りを上げて斜めから斬りおろされる。クレスは一瞬間をおいて剣で軽く受け流す。
二撃目、今度は逆の手ヴォーパルソードを左から右へ真一文字に薙ぎ払う……少し上を狙いすぎたためかあっさりと身体をしゃがませて躱される。
三撃目右側に集まった二振りの剣を一気に左へ薙ぎ払う……その際若干の真空波が発生したがバンダナの少年はその間合いを読んだうえでバックステップで回避する。
ここだ!!クレスはバックステップ後剣を強く握り突きの体勢に入る。
二刀の剣の真一文字の回転薙ぎ払い……確かに当たればでかいが、外れれば隙ができる。

「はあああああ!!!!」

クレスの剣とロイドとの間が70センチになるか否やのところでクレスはロイドと目があった……その顔は小さく笑っていた。

「あんたなら、このタイミングで絶対攻撃してくると思ってたぜ、獅吼旋破!!!」

「ぐはぁ!!」

獅子の闘気をまともにクレスの身体は後方へと吹き飛んだ。

「少し勝負に行くのが早かったようだ……!?」

体勢を立て直し振り返ると前から白い斬撃がこちらへと向かっていた。
クレスは何も言わず、これを左手の剣で薙ぎ払う。

「目くらましのつもりのようだが、そんなもの僕には通用しないよ。君のいる場所は地上ではなく空。」

目線を斜め上にやるとかまいたち状に回転する何かがこちらに向かっているが、少年は全く気にしていなかった。
なぜなら、その技はすでに二度見ており二回目にはきわどいながらもカウンターを決めていたからだ。
少年は剣を両手で握り、攻撃体勢に入る。
裂空斬……クレスはこの技の名前は知らないが、技の終わり際つまり地面に着地するときに足から着地をしなければならない都合上、どうしても着地際に減速そして隙が生まれるのを見抜いていた。
移動しながら攻撃できる点は評価できるが、一対一の勝負において多用できる技はない。
今の間合いと先ほどの技を含めてこの攻撃はぎりぎりで届くか否かのところだ、だからこの技はあくまで捨石。
着地から次の技へと繋ぐのが本命だろう……しかしそれはもう無理な話だ、なぜならクレスは着地する前に勝負を決めるつもりだからだ。
剣に意識を集中していくこの技の名は”真空破斬”一瞬のタメが必要であるが、発動すれば剣3つ分の距離まで斬りつけることが可能だ。

「今度こそ終わりだ!!!!」

タイミング……スピード……角度それらは全て完璧だった……
闘気から生み出された真空の刃は相手を切り裂き勝利の宣言が鳴らされるはずであった。
それは、いうなれば詰将棋……王を幾重にも囲み逃げ場をなくした。後は自分の駒を置くだけであった。
だが、クレスは気付かなかったいや気付けなかった。
それは、ほんの些細なことだった……小さい炎がやがては大きな炎になるように……見えないところで着々と進んでいた……
覚悟の決めた人間………………
しかもやけくそにならずに今まで丁寧に攻めてきた相手がここにきて同じ技を三度もするであろうか…………………

「何!?…攻撃が終わらない!? 違うこれはまったく違う技?…まずい!?」

クレスは盾を突きだす。
相手の剣が盾に当たるが、思ったほどの衝撃が腕に伝わってこない。
そのままロイドは回転しながら真上へ垂直に上昇していく。

「最後の最後でこんな仕掛けをしてくるとは……だが、もうこれで何もできないはず……着地してきたところを…………まだ……終わってない!?」

クレスがガードを固める。
空中に舞い上がった赤服の天使の翼の輝きが強くなる。


「こいつでぶちぬけぇ、飛天翔駆!!!!!!!」


ロイド自身のもつ最高級の威力、スピードを兼ねそろえた技、発生までに時間がかかるのが難点だが発動すれば天使化の力も合わさり、回避することは不可能に近い。


「いけええええええええ!!!!!」


ロイドの剣がクレスの盾に当たる。
盾の表面がはがれ残骸がぼろぼろとお落ちていく。
そして、ついにその時が訪れた。



「バキィーン!!!」



その金属音は要塞が崩壊したことを二人に伝える。
小さな要塞はキュルキュルと回転しながら宙に舞い、数秒後に文字通りスクラップと化し、醜い音をたてて落下してきた。
要塞が崩壊したらどうなるか………

「ガキィーン!!!」

赤服の天使は当然のことながらこの機を逃さず一気に勝負にでる………
バンダナの剣士は当然のことながら守りに転じる……しかし、相手は二本こっちは一本、実力が拮抗している状態で一本を失ったのはかなりの痛手だ………
相手の方がスピードに利がある……このままいくとじり貧で負けてしまう。
そうなるとバンダナの剣士はどう動くか……………

要塞が崩壊したらどうなるか………


「よっしやぁ、ついに壊したぜ。後は……一気に行くだけだ!!!」

ロイドは地面を蹴り、一気にクレスとの間合いを詰める。

「ガキィーン!!!」

ロイドの初段に対し、クレスは片手では防げきれないと判断し、剣を両手で持ちこれを防いだ。

「まだだ!!!!」

二刀流のもう一本の剣が唸りをあげる……すでに両手を使って一つの剣を押さえているなかで相手がとれる行動は一つしかない。
重心が後ろに傾くのを感じる……このままいけば攻撃は躱されるだろう。
案の定この攻撃はぎりぎりのところでかわされた……だがこれこそがロイドの狙い。

「瞬迅剣!!」

相手のバックステップを確認するとロイドは相手に合わせて風を纏った突きを繰り出す。
本来この攻撃は立っている相手を吹き飛ばす技である……だが相手の重心が完全に後ろにいってる状態で繰り出すとどうなるか………
まだバックステップで足が付いていないところを狙い打ったその突きをクレスはすんでのところで防いでいたが、威力は殺しきれずしかもガードが遅れたために剣が腕から離れて宙を舞う。
クレスの相棒のエターナルソードは、キュルキュルと回転しながら宙を舞い重力の法則に従い、ロイドとクレスのちょうど中間の位置に深々と突き刺さった。

両者は即座に全力で走る…………
戦いのさなかで武器を手離すことの重大性がどれほどのものかクレスはよく理解していた。
当然、ロイドの方も分かっていた。
(今、剣を離したのは決してわざとではない…それは相手の表情を見ればわかる。
だからこの剣を獲れば、勝てる。)

「俺は絶対に勝つ!!」


走る…走る…走る…走る……


こちらが地面を蹴り終わった……相手は今一歩を踏み出そうとしているところだ……


走る…走る…走る…走る……


残り距離おおよそ5メートル……今の自分の歩幅は通常時に比べて1.5倍上がっている……相手は一歩目を踏み出し、片足が浮いている状態だ……


走る…走る…走る…走る……


残り距離3.5メートル……何だろうこの感覚は……周りの動きが…遅く感じる……
今ならはっきりとわかる…俺の方が先に地面に着いた……


走る…走る…走る…走る……


残り距離1メートル……もうそれがすぐそば手が届きそうで届かない位置まで来ている……
ここまでくればロイドが最後の一歩を今踏み出す……
これがおそらく最後の一歩になる……
相手は……!?まずい相手のスピードがあがった!!



走る…走る…走る…走る……走る……走る……走る……



物事にはどんなことにも勝ち負けが存在する……



そして勝つ確率というの勝負の前にもついているのもまた事実……



勝ち負けが本当に運だけで決まるのか………否



勝つという事象はいくらかのピースが重なってできるものである……



よって、勝つということは偶然ではなく…必然!!
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