Wateremelon

□標的14
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『やぁ。
手荒い歓迎をありがとう』



* * *



『あの変態ドクターのせいで桜見れなくなっちゃったんだって?
お気の毒サマ。』

「桜が見れないなら梅を見ればいいだけだよ、とくに不便はしてない。」

『そう?
……………恭弥、まさかと思うけど一人で花見した?』

「そうだけど何?」

『嘘でしょ!?彼女居ないの?!』

「興味ないね」

『もったいなっ…!!
せっかく美形に生まれたんだから楽しまなきゃ損だってある人は言ってたよ!』

「誰?」

『あたしの彼氏。
純粋そうな女の子たぶらかしては、現実突き付けて泣かせてるような人。』

「ワォ。最低だね君のツレ」

『あたしもたまに似たような事するんだけど』

「…最低だね君達カップル」


今日は、雲雀恭弥と楽しいおしゃべりをしに来たわけではない。
例の約束を果しに並中まで来たわけだ。
その時、中からの返事を待たずに応接室に入ったらトンファーが飛んできた。
危ないよね、全く…。

外と中を仕切る扉の前で屯する不良を一掃した恭弥の後に続いて屋上に入ると、いきなりトンファーが向けられた。
あんたは"待て"ができない犬か……。


「…ねえ、気になってたんだけどその手袋何。
かなり似合ってないよ」

『武器その一…みたいな。
あたしが敵だと判断した人や物に対して、熱を発し火傷を負わせる程度の能力を秘めた賢い子だよ。』

「…本当みたいだね。
原理はどうなってるんだい?」

『さぁ。恭弥ってば理系?』


あたしが掴んだ銀色の部分を触った恭弥が、新しいおもちゃを見つけた子供みたいに目を光らせた。
原理と言われても、初代大地から受け継いだだけだから、あたしがその仕組みを知ってるわけがないんだよね。


「その背中にある武器は使わないの」

『恭弥次第じゃないかな!』


再びトンファーが向かってくる。
それを宙に跳んで避けると、そうくるのがわかっていたかのように、反対の手で持ってたトンファーでの第二撃。
トンファーが当たる前に空中から脚蹴りをお見舞いしようとすると、身体を少し後ろに引いて身を反らせる恭弥。

ありがとう、花丸をあげよう


「っ…!」

『二発目にも備えないと、ね』


後ろに下がった恭弥に、身体を捻ってもう片方の脚で打撃を加える。
全く予想してなかったみたいで、綺麗に当たって吹っ飛んだ。

後ろに下がったら100点、しゃがんだら50点、それ以外なら0点。

恭弥の反応のおかげであたしは100点を取れました。
前に戦った時にも注意するように言った気がするんだけどなぁ…。


「………この後ろのフェンスが張替えたばかりの物だって知ってて…?」

『そうなの?老朽化?それとも誰か落ちたの?』

「山本武だよ、7月頃にね。」

『へーっ自殺とかそんな馬鹿な真似してたんだね!』


叩きつけられたフェンスを背に、恭弥はトンファーを持ち直して向かってきた。


「へぇ…剣」

『かっこいいでしょ、ブロードソードって言うんだよ!』

「でも一振りじゃ足りないんじゃないの!」


スピードを付けて振りかぶった恭弥のトンファーを、背中に背負ってた剣を抜いてしっかりと止めた。
力勝負だと間違いなく押し負けちゃうから行動起こしてくれないかな、なぁんて思いながら銀色越しの会話してたらもう一方のトンファーを振る恭弥。
柄から片手を話して、滑るように振りかぶられたトンファーを、さっきと同じように押さえた。


「……手品??」

『タネも仕掛けもありません、なんてね!』


トンファーと剣が合わさる所を力点にして宙に飛んだ。
剣の持ち方を変えたあたしにトンファーを構え直す恭弥。

残念だったな、あたしはナイフ使いでもあるんだよ!

恭弥のズボンの裾にナイフを投げて、少しの間その場から離れられないようにしてから、柄で頭を殴った。
よろけた恭弥の背中を蹴ってコンクリートに転がす。
綺麗に受け身を取ってすぐに立ち上がろうとしたけど、遅い。


「……ちょっと。
重いんだけど」

『はぁ〜??
あたしを重いと言うなんて…有り得ない…』


コンクリートに倒れてる恭弥の背中に押し付けてた膝にさらに体重をかけた。
至って平均的な体重だから別に重いと言われる筋合いはないし、女の子としては言われてカチンとくるものだしね。
チャイムが鳴ったのを合図に、脚をどけて手を差し出した。
…んだけど、恭弥はそれを華麗に無視して立ち上がった。


「ねえ、なんでその剣二本になったり一本になったりするの」

『企業秘密、ってとこかな。
大丈夫?
一応、殺すためのバトルじゃないから死に繋がるような行動はしてないけど…』

「…手加減してたってことかい?」

『あー、違う違う。
ありとあらゆる急所を避けたって意味。』


手加減を嫌うのはわかるけど、本気でやったら殺しちゃうし…
人の為になる嘘もあるって言うしね、あたし悪いことしてないよね。

アマーロ(あたしのブロードソード)が二本になった不思議を解明したいのか、それとも単なる武器マニアなのか、触りたそうな恭弥にアマーロを渡した。
重い、って意外そうにボソリと呟いた恭弥。


『それなりにいいやつだしね。
もう馴れた重みだけど』

「使い込んでるんだね」

『まぁね。
そのこか、ナイフか拳銃しか普段使わないし。
日本で拳銃使うのはめんどくさいから、最近は二択だしね。』

「ふぅん…これどうやって入手したの?」

『師匠…みたいな存在の兄貴分に貰った。
貰ったときは二桁いったばっかりの女の子にこんな重いもん渡すなよ、って思ったけどね。』

「ちょ、ちょっと姉ちゃん、なんで学校に、いんのー?!」


今度こそほのぼのと(内容は物騒だけど)雑談してたところに、息を切らしながら綱吉と、いつもの二人が現れた。
遊びに、って軽く返すと、不法侵入だー!と叫んでから咽る綱吉。
その背中をさする武と、恭弥に喧嘩をぶっかける隼人。
苛立ったのか透かしたり振るったりしてたアマーロをあたしのほうに投げ捨てて、トンファーを構えた恭弥がゆらりと動く。


「ねえ…君達、咬み殺されたいの?」

「ご、誤解ですー!!!!!」



黒天使の魔法



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