Wateremelon

□標的31
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京子ちゃんとハルを殺そうとしていた双子が、シャマルとイーピンに倒された。
倒れた双子が映る映像を見て、バーズというおじさんはあからさまに顔をしかめたけれど、手元のパソコンを見たバーズはまた気持ち悪い笑みを浮かべて鼻血を垂らした。


「あの双子がやられたのには肝を冷やしましたが、まだ策はありますよ。
こちらをご覧ください」


ぱっと、二つの映像の変わって映し出されたのは、長い金髪を揺らしながら商店街を抜ける姉ちゃんの姿。
そしてその後ろには、一定の間隔をおきながら着いていくさっきの双子によく似たヤツ。
驚く俺達3人の声が重なった。


「彼女を狙っているカレはヂジと言いまして。
あの双子の兄で、あの二人以上に危険だということで過剰なまでの拘束で動きを封じられてたヤツなんですよ。
なんせ先天的に理性という物がないのでして。
ほぅら見てください、あの女性を襲いたくて仕方ないという様子でしょう?」


ビルとビルの間の、昼間でも薄暗い路地裏に入って行った姉ちゃんを追うヂジというヤツの手は怪しく動いていた。
それぞれバラバラな動きをする10本の指は気持ち悪くて、その指が姉ちゃんに触れるなんてダメだと思った。


「さてさて、このままだとボンゴレ10代目のお姉さんはヂジに襲われて裸体と身体の中身をぶちまけてしまいますよ?
私としてはあの妖艶なお嬢さんがどのように鳴くのか気になるので構わないんですけどね?
大事なお姉さんが犯される様子を見たくないのなら、そちらのナイフを刺してくださいね?ボンゴレ10代目?」


赤くなった自分の顔がサァっと青ざめていくのを感じた。
隣にいた獄寺君の舌打ちする音が響く。
そんな間にも、ヂジは姉ちゃんに手を伸ばしていた。
姉ちゃん……!!

ナイフの柄を両手で持って、振り上げようとしたら「馬鹿ね」と呆れ顔のビアンキに止められた。
「なんで!!」とビアンキに向かって叫んだら「あいつは、あの兄弟なんかよりもずっと悪魔だぞ。本物のな。」そう俺達に言うリボーン。
言ってる言葉の意味がわからなくて、意味を聞きだそうとしたらバンッという大きな鈍い音とうめき声が映像の中から聞こえてきた。
崩れた壁に投映された映像は、姉ちゃんもヂジというヤツも映してはいないけれど、さっきのうめき声は姉ちゃんの声ではなかった。
それには俺だけじゃなくて一緒に来た皆も、バーズももちろん気付いていた。


「お、おい!!どうしたヂジ!!早くその女を片っ」

『あたしに刺客を仕向けるならさぁ…あたしの旦那様や師匠レベルの人じゃなくちゃ、ねぇ…?』


映像の視点が変わってようやく映し出された光景は、姉ちゃんがヂジを踏み付けている、まるで女王様の様なものだった。

実姉の女王様っぷりに顔を覆いたかったけど、姉ちゃんからなぜだか視線を反らす事ができない。
それは多分、映像の向こうにいる姉ちゃんの氷河よりも冷たくて包丁よりも鋭利な琥珀のせいだと思う。
恐ろしいほど冷えきった姉ちゃんの目はヂジを見下していたけど、「あたし急いでるから」と言った後に視線を上げてカメラ目線になった。
画面越しに重なった視線に、背筋が寒くなった。
そのまま映像は途絶えて、逃げようとしていたバーズは獄寺君に倒された。
進まなくてはと思いながらも、姉ちゃんに感じた恐怖が俺の中から消える事は無かった。



悪魔の称号



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