エヴァ文A

□離れないように
1ページ/5ページ

「…うん、分かった。じゃあね」
携帯の電源ボタンを押して通話を終了させた後、溜め息をひとつついた。

沈む夕日を背に、僕は今1人で帰っている最中だ。
いつもはシンが横にいるけど今日はいない。今日はトウジの家に寄ってから帰ると言っていた。
今の電話の相手はシンで、夕飯はトウジの家で食べるそうだ。なので自分の分はいらないという内容のものだった。
本当は僕も誘われていたが、疲れてるし少し体調が悪かったのでせっかく誘ってくれたのに申し訳ないなと思いつつ、誘いを断った。

今日の夕飯は昨日作り置きしておいた煮物があるからそれを温めて済ませよう。
とにかく眠いから夕飯の時間まで少し寝よう…なんて考えているうちに家に着いた。
いつものようにカギを開けて中へ入る。
…が、何かいつもと違う違和感を感じた僕は一旦玄関で足を止めた。
「(何かいる?まさかな…今日はシンもいないんだし、そんなはずは…)」
この違和感を気のせいだと思い込み、靴を脱いだ後念のため音を立てないようおそるおそる部屋へ向かう。

ったく、何でこうなるんだよ…
しかも何でこういう時に限って僕1人なんだ…
もし泥棒なんていたらどうしよう?

…なんて考えているうちに部屋の前まで辿り着いていた。
「……」
音を立てないようゆっくりと、少しだけドアを開けてその隙間から部屋の中を覗いた。
「……っ!!?」
そこにはあるはずのない人影がひとつあった。
それを見た僕は一気に眠気が覚めた。
悲鳴すら出ず、さっきと同じように来た道を戻り玄関まで辿り着くと一気に外へ飛び出し、隣りの住人に助けを求めようとした。

…と、そこに偶然いつも会う人物が視界に入る。
彼のほうも僕に気付いたようで、その赤い瞳と目が合った。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ