エヴァ文A

□誰から?
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僕は今、重い足取りである場所へ向かっている。
「…ハァ、面倒だな。やっぱり引き受けなければ良かったかな…」
周囲に人がいないのを確認してからそう独りごちた。



事の発端は数分前。
今日図書室に新しい本が入ったと聞いて、どんな本か気になったので放課後1人で図書室へ向かった。
その本の表紙を開き、あらすじを読んでみるとなかなか面白そうな物語だったのでそのまま読んでいく事にした。

読んでいるうちについ没頭してしまい気付いたら4時になっていた。
あまり遅くなるとシンが心配するからそろそろ帰ろうと、本を読むのを中断し本棚へ戻した。
図書室を出ると、さっきまで同じく図書室にいた同じクラスの女子が廊下に出てきて僕に声を掛けてきた。
彼女とは必要以上の会話をした事がない。
それなのに、僕に一体何の用だろう?
…と思ったのも束の間、リボンがついている袋を持っているのに気付いて僕はまたか、と溜め息をついた。
袋の中に入っているのは確実にチョコだろう。
でもそれは僕宛てではないはずだ。

そして、彼女が次に発したのは僕の予想通りの言葉だった。
『これを渚先輩に渡してほしい』と。
先輩、という事は同じクラスの渚ではない。
こういう事を頼まれる事が多く、1人引き受けてしまうと次々とキリがなくなってしまいそうな気がするのですべて断るようにしていた。

もちろん今回も断るつもりだったが『こんな時間に私が渡しても彼は受け取ってくれないだろうから…』と続けてきたので僕は妙に納得してしまった。

彼はあの容姿に加え、生徒会長なので驚くほどモテる。
最初の数人から渡されるチョコは受け取るらしいが、その後は『食べきれない』という理由でまったく受け取らなくなるらしい。
彼にチョコを受け取ってもらいたいのなら早く渡さなければダメという事だ。
だから…放課後に渡すなんてまず無理な話だろう。
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