「今日で一週間、か…」
カレンダーに刻まれていく赤いバツ印。その数は、七つ。
こんなことしても虚しいだけだって、分かってる。分かってるんだけど…止められない。
意味もなく数えたバツ印。
一、二、三、四、五、六、七。
バツが七つ。この事実は動かない。赤ペンが手から零れ、床で乾いた音を立てて転がった。
「一週間、か…」
最愛の彼と会えなくなって、今日で一週間が経った。仕事だって分かってる。俺のために働いてくれているのも分かってる。分かってるけど、やっぱり…
「寂しい…」
お気に入りのクッションをギュッと抱き締めてベッドに転がる。彼がいないダブルベッドは彼の温もりを忘れ、冷たかった。
彼は、仕事の都合で、何日間か支社の方へ出張することになった。しかも期限は未定。つまり、いつ帰ってくるか分からないということ。
心配させたくなかったから、彼の前では強がった。彼は何度も心配そうに問い掛けてくれたけど、「大丈夫だから気にしないで」とそう言って、彼を送り出した。
本当は、行って欲しくなかった。俺はウサギちゃんだから、寂しいと死んじゃうから。…十七にもなって何言ってんだよ、甘ったれるな俺!! と自分に叱咤して、彼の帰りを待っていた。
彼は毎日、仕事が終わったら電話をくれた。どんなに終わるのが遅くなっても、彼からの電話は途切れなかった。その度に彼は俺の事を心配していて、早く帰るからと言ってくれる。その電話が、今の俺の心の支えだった。
カレンダーにバツ印を刻む赤いペン。何気なくそれを拾い上げ、バツ印を指し示しながらまたその数を数えてみた。
一、二、三、四、五、六、七。
七つのバツ印。――彼が、居なかった印。
「寂しいですよ、ソフトンさん」
貴方が居ないとご飯が美味しくありません。
貴方が居ないと家の中が静かすぎます。
貴方の腕の中じゃないと安心して眠れません。
あと…どれくらい会えないんですか?
考えたってしょうがない。だけど今は、無性に彼の声を聞きたい。声を聞いて、話して、愛の言葉を囁かれたい。――本当は、今すぐにでも抱き締めて欲しいのだけど。
ここに居ない彼に望んでも、それは叶わない願いだから。
枕元に置いてあった携帯電話が鳴った。手に取って確認すると、ディスプレイに表示されているのは彼の名前で。
嬉しくなって、すぐに通話ボタンを押した。
「もしもしソフトンさん? 俺、ソフトンさんが好きですよ」
『開口一番にそれとは、驚いたな。何か良いことでもあったのか?』
「いいえ。ただ…ソフトンさんに早く会いたいって思ってたら、言いたくなったんです」
『フフ、そうか。仕事なんだが、思ったより早く片付いたんだ。明日の昼にはそっちに戻れる』
「え、ほ、本当ですか?」
『あぁ本当だ。だからな、ヘッポコ丸。
俺のことを想って、待っていてくれ』
――――
会えない夜を数える
the GazettE/Casiss