時雨月の空
□序章
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しとしとと、雨が降っていた。
もう部活は引退したが、受験の面接練習があってすっかり遅くなってしまった。
まだ将来の夢が決まっていない俺は自分の力で行ける大学を志望していて、学部もなんとなく興味を引いたところを希望している。
「将来の夢、ねぇ」
小さい頃はあったのかも知れないが、残念ながらもう忘れてしまっている。
「げ、赤かよ」
信号が赤になり、立ち止まる。ここの信号は赤信号の時間が長いから嫌いだ。
進路の事など頭の隅に追いやり、今日の夕飯何かなーとか考えていると、
キキーーーッ
「………………え、」
突然身体が宙を舞った。
跳 ね ら れ た … ?
俺、信号待ってただけなのに?
なんで?
地面に叩きつけられて、意識が朦朧とする中、俺を轢いた車が走り去っていくのが見えた。
「轢き逃げ、かよ…」
身体中痛いくせに、俺はどこか他人事のように思えていた。
雨に濡れているせいか、身体が冷たい。
視界の端には転がった傘と俺の鞄。
俺、死ぬのかなあ
嫌だな、と思いながら、視界はフェードアウトしていった。
end
全ての終わり