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□後ろ姿を見つめてみる
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とは言っても三番目覚まし鳥が鳴いたから、もう朝の八時。土曜日曜ならともかく、平日なら確実に学校に遅刻するだろう時間帯だ。

現にメイドさんは俺が起きた時にはもうテキパキと働いていたし、兵士は自分の持ち場をきっちりと守り、自主訓練をする奴もいた。

此処の朝は比較的早いんじゃないかと思う。


ゆーちゃんに用事があって馬鹿みたいに広い廊下を曲がると、グウェンダルを発見した。


声をかけようとして、止める。


なるべく足音をたてないようにして、ゆっくりと歩く。幸いなことに此処は魔王や十貴族の寝室が主で、廊下の絨毯は見たことがないくらいに豪奢な作りでふかふかしている。
その為、多少は絨毯が音を消してくれた。

いつもは正面か横しか見ていないから、グウェンダルの後ろ姿というのは物珍しかった。

いつもは一部分だけ縛られた濃灰色の髪が今は下ろされていて、歩みは足が長く歩幅が大きい為か少し早い。

そして、俺が話しかけるのを止めた理由は、グウェンダルの背後を観察する為じゃない。まあ、それも少しはあるけど、背後から見ただけでも止めた方がいいと判断したからだ。


あれは、絶対に怒ってる。


機嫌が悪い、というんじゃない。怒っているんだ。そして、グウェンダルが行く先は俺も用事がある、ゆーちゃんの寝室だろう。


そこにはきっと、また朝のドタバタを繰り返している四人がいる。


怒りを向けられているのはゆーちゃんか、はたまた別の誰かか。

確率的にはギュンターが高そうだなァと思いながら、ゆっくりと歩を進める。

確か、昨日、仕事のせいで徹夜が続いているメイドのラザニアちゃんに聞いて、俺が丸めこんで(というか脅して)寝室まで連れて行ったんだっけ。

久しぶりの睡眠を騒ぎ声で邪魔されれば気分は最悪で怒鳴りこみたくもなるだろうな。

そんな事を思いながら、それでも俺は口角が上がるのを止められなかった。



ああ、グウェンダルに言っておくべきか?



お前、パジャマでナイトキャップしたまま怒鳴りこみに行くわけ?



その場が凍りつくだろう事を予想しながら、俺は声を出さずに笑う。


ああ、この世界は面白い奴ばかりだ、と。



後ろ姿を見つめてみる



end

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