短編

□女王候補と光の守護聖
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ジュリアス様の印象は、いつも怒っている人。それは初めて会ったときから変わらない。初めての会話も説教からだった。それからというものの出会えば口喧嘩がやまない。


「名無しさん、また土曜の視察に行かなかったらしいな。何度忠告したら分かる女王候補としての自覚がお前にはないのかまあ元から期待なんてものはしていないが私だって忙しいのだいい加減にしろ」
「すみませんその日はとても大切な約束があったので今から伺おうとしていたんですジュリアス様もいつもお忙しいと仰るのにわざわざ特別寮まで説教しに来るなんてよほどお暇なんですね」


部屋の扉越しにお互いの言い分を述べる。顔さえみたくないぐらい嫌いなのだ。それは相手も同じようで以前に「育成の要件なら手紙をだしてくれれば良い」という内容の手紙が来たぐらい。


「…以前から思っていたのだが、最近育成よりプライベートを優先し過ぎていないか?はしゃぎたい年頃だとは思うがそれの区別ぐらいしなさい。」
「ジュリアス様に言われなくてもわかっています。お言葉ですが育成も今のところ順調ですしプライベートも順調なんです。今日は早くお帰りくださいクラヴィスがそろそろ来るので」
「……クラヴィス?」


嫌みを言い続けていた会話がぴたりと止む。表情も険しく、少しびっくりして「どうしたんですか」と尋ねてしまった。

「…女王候補ともあろうがまさか今日も遊び呆けると言うのか!昨日もだろう、大体クラヴィスとは何事だ。いつの間に親しくなっている。もしや付き合っているなどと言うのではないな?お前は時期女王になるその候補なのだぞ!そんな薄い思い、断ち切れ。」
「ハ、ハァ!?だから育成も今のところ順調だから遊ぶんです!しかもなんですか後半、付き合ってないですが女王候補女王候補うるさいんですよ!私が誰を好きでもいいじゃないです―――ッ!?」

急に怒り出したジュリアス様。扉に両腕をバンッと当て力説し始めた最中、突然目の前の扉が開き私は前のめりに倒れてしまう。あ、そういえば鍵かけるの忘れてた。


「な、なにす………っ!」


受け止められたと思ったらジュリアス様のにおいが充満しバッと起きあがる。なんて、良いにおいなんだろう。少しでもそう思ってしまった私に自己嫌悪。


「駄目だ」
「え……」


ジュリアス様は歩み寄り、頬に右手を添えてきた。久しぶりに目線が絡み合う。最高に恥ずかしい。この人は何がしたいんだ。


「お前が好きになるのは私以外、許さない」

「…な……………」






「目障りだ。中でやれ。」


二人以外の声にひっと歎声がでて、ジュリアス様の肩の向こうを見ると腕を組み眉間に皺を寄せたクラヴィスを発見した。

「あ、クラヴィス…!」
「………」
「…端からみればいたいけな少女を扉に押し付けて迫っている野獣だな」

ジュリアス様はキッと睨みつけ、クラヴィスはクツクツ笑う。いかにも楽しそうに。

「クラヴィス、ごめんなさい、また後で伺います」
「もう良い。面倒なことはごめんだ」

クラヴィス様は一瞬ジュリアス様を一瞥すると口角をあげ黒いローブを翻した。

「………良かったのか」
「まあ別に対した用事もなかったので。」
「そうじゃない。せっかく会えたのだから、私など放ってデートに行けばいいものの」
「この体勢で行けるとお思いですか。それに私、クラヴィスに対して恋愛感情とか持ってませんし」
「む……しかし、名前を…」
「ジュリアス様以外の守護聖様を私は下の名前で呼んでますよ」
「は?」

あ、間抜けな顔。いつも説教をしてくる顔とは違うすごく柔らかな素の表情。

「………初耳だ」
「会いませんでしたしね」
「私のことはそう呼ばないのか」
「………」
「……どうやら言葉を間違えたらしい。…呼んで、くれ。」


何、このジュリアス様。口喧嘩しているときはめちゃくちゃ皺作って憎たらしいこと言ってきたのに。そんな愛しそうな目で、今頃みないで。


「ジュ……リアス…」
「…なんだ、名無しさん」



初めてジュリアス様に、緊張しながら話した。











「何度も何度も言ったはずだ名無しさん…いい加減、しっかり育成をしろと!順調だからと言うから仕方が無く放っていたが先程王立研究院でパスハが怒っていたぞ!さっさと行ってくるのだな」
「でも今日はジュリアスとのデートの日じゃない…そんな大切な日に他の男のところに行ってもいいの?それでジュリアスは…いいの?」
「…………………仕方がない。明日は必ず行くように」
「(ラッキー!)」


それ以来口喧嘩は減りました。
おしまい。









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