プラトニックシリーズ
□リビドーに基づく
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知らせを聞いたのは、ジュリアス様からだった。最近名無しさんの宇宙がまるで発展していないと思っていたらここ五日間ほど体調不良で安静にしているらしく、本人自身は元気と言うが女王補佐官はそれを許さないだとか。
体調を崩していると聞いて、一瞬胸がざわついた。だがあのお嬢ちゃんならきっと大丈夫だろう。心配することなんてない。
それにしても発展しないのはこっちとしては好都合で、俺は惜しみなくレイチェルの宇宙に炎のサクリアを注ぎ込む。
また、惑星ができた。
民は喜んでいる。しかし資料に目を通す限りだんだんとサクリアに対しての望みが薄くなってきていた。もうここまでか。
「………どうなさいましたか?」
「エルンスト。いや、ちょっとな」
「炎のサクリアはもう充分だと思いますが、あなたはまだ続けるのでしょうか」
「俺のお嬢ちゃんへの愛が尽きるまでは、永遠に注ぐぜ」
ゴホン、と大袈裟に咳きこまれ口を紡ぐ。こいつは分かりやすい。言いたいことは分かっている。
「名無しさんの宇宙では今一番、あなたのサクリアが求められています。元々あったサクリアも奪われ民は困惑している。…どうなさるつもりです?」
「そうだな。気が向いたら、送るさ」
「オスカー様!」
カッとなるなよ、と呟きエルンストの前を通り過ぎる。根っからの真面目というのは少し苦手だ。冗談ってものがきかない。
「――――いや、冗談じゃ……ないな…」
先程から止まない胸騒ぎが余計に俺を煽る。
「はい、あーん」
「あーん!」
「もう…ひとりで食べなさいよ」
そう言いながらもレイチェルは渋々切ったリンゴを次々と口に入れてくれる。ちょっと風邪気味なだけなのにすぐに駆けつけてきてずっとお世話をしてもらっている。こんな優しいライバルを持って、すごく幸せ。
「すこし咳が続いてるだけなのにみんな大袈裟だよ」
「そんな赤い顔してよく言うよ!」
「あだっ」
デコピンを食らった。ごめん、正直すごく痛い。
そんなやり取りをしている最中に、ノック音が響いた。レイチェルが立って返事をする。私は布団を被って寝込むフリ。
レイチェルと誰かの声が聞こえる。何を言ってるのかは分からないけど…あれ?レイチェル、今怒った?耳を必死に澄ましていると足音が近付いてきて私のシーツをバッと取り上げた。
「……名無しさん、お客様だよ」
「客?」
トーンが低くなり、目線を泳がしている。
ああ、なるほど。
「アンタと…話したいんだって」
「………通して」
普段はカンの優れない方だけど今日は特別のようだ。
リビドーに基づく
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