過去拍手

□幸福な時間 Side:A
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「燭ちゃん、燭ちゃーん」


研案塔に来たついでに燭ちゃんの顔を見にいこうと探していると、廊下で療師とばったり出くわした。



「燭なら奥の部屋で寝ておる。最近徹夜が続いておったからの」



「ありがとう療師!」


寝ているのに大声で呼ぶなんて悪いことをしてしまった。



燭ちゃんが起きてないことを祈りながら、小声で療師にお礼を言って部屋に向かった。



そろりと扉から顔を覗かせてみる。いつもなら仕事の邪魔をするなとすぐさま不機嫌な声がとんでくるけど、今日は静かだ。



「・・・燭ちゃん?」


こそりと名前を呼んでみる。返事はない。



音を立てないよう気をつけて部屋に入った。



「あ・・・・・・」


てっきりベッドで眠っているのだと思っていたら、燭ちゃんはソファーに横になっていた。少し窮屈そうだ。



窓から風が入っているのに上着も着てない。毛布を持ってもう一度部屋を訪れてみれば、燭ちゃんは身動ぎひとつしてなかった。



ほんとうに疲れてるんだな。ちょっとかわいそう。



そっと毛布を掛ける。



仮眠を邪魔しないようすぐに帰るつもりだったけど、興味本意で燭ちゃんの傍に座ってみた。



いつもは見上げている燭ちゃんの顔が目の前にある。



相変わらず彫刻みたいに整った顔。



長い睫毛に触れてみる。



まったく起きる気配のない燭ちゃんを見ていると
こっちまで眠たくなってきた。



ソファーの背に引っ掛けてある燭ちゃんの白衣を布団代わりにすることを閃く。



燭ちゃんの白衣はぶかぶかで燭ちゃんの匂いがした。



私が燭ちゃんと居るときが一番幸福に包まれていることを、この人は知らない。





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