07-GHOST
□月光
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青い月の晩は綺麗すぎて、無性に切なくなる。
まるでひとりで散歩の途中に迷子になってしまった子どもみたいに。
まるで、おかあさんを呼ぶ子どもみたいに。ホームシックになりそうになる。
小さい頃からこの教会で育って、此処が家のようなものなのに、変なの。
窓ガラス越しの月光が冷たい廊下に反射している。
冷たい、家。
おとうさんとおかあさんが二度と帰ってこない、家。
青い月の晩は綺麗すぎて、無性に泣きたくなる。
誰かそばに居て欲しくなる。誰か、だれかそばに―――
「どうしたぁチビスケ。また泣いてんのか?」
「!!」
頭上高くから声がし、月を見上げていた私の体が影に包まれた。
よく知っている、優しい声と影だ。
「…フラウ司教、こんばんは。ついでに言わせてもらいますが私はチビスケじゃありません!それに泣いてないですし。」
泣きたくはなるが、泣いたことはない。
もう、何時でも泣けるほど、子供ではない。
フラウは、ガキの頃はこんなんだっただろ、と言って自分の腰下辺りに手を並べて、おどけてみせた。
骨ばってごつごつした、大きい手。
優しいフラウの手。