short story

□ワガママ聞いて?
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放課後の屋上で、私はひとり景色を眺めながらぼーっとしていた。

「はぁ・・・・」

今日は私の誕生日。

なのに彼氏の岳人は何もくれなかった。

というか「おめでとう」の言葉さえ聞いてない。

「私の誕生日忘れてるのかなー」

そう思うとなんだかちょっぴり悲しくなった。

やっぱり何かプレゼントとか欲しかったかな・・・

だって彼女だもん。

岳人にとって特別な存在のはずだもん・・・
自惚れでもいい、私はそう思ってる。

「もうークソクソ岳人っ!」

岳人の真似をして誰もいない屋上でひとり叫んだ。





「何だよ」

「え・・・うわっ!」

後ろから声がしたので振り向くとなぜか岳人がいた。

「俺何かしたか?」

「うん!思いっきり何かしてるよっ!」

私は頬を膨らませて怒ったフリをした。

「ったく・・・言ってミソ」

子供っぽい仕草になぜか呆れられながらも岳人がそう聞いてきたので大声で言ってやった。

「今日は何の日?」

「え?今日何かあったっけ?」

「あるよっ!!!」

「ちっ・・・声デケーなあ・・・今日は・・・あ!お前の誕生日!」

「そうよ!忘れてたでしょ!?」

「・・・ああ、わりぃ」

「もう〜〜クソクソ岳人ぉ・・・!!!」

「今度やるから待ってろ」



今度なんて待てないもの!




そうね・・・この際物なんかいらない。




年に一度の誕生日だもの。ひとつくらいワガママ言ったっていいよね・・?






「ねえ・・・物とかいらないから・・・キス、して?」

我ながら恥ずかしい要求だ・・・

「え、えぇぇええ!」

突然こんなことを言ったものだから岳人は戸惑っている。

「だ、だって…つ、付き合ってもうちょっとで1年なのにっ…き、キスしたことないじゃないっ!!」

私もなんだか恥ずかしくなってきたので岳人と正反対のほうを向く。

「…べ、別にいやらしい意味じゃないからねっ!私はただ…んっ・・・」




全部言い終わらないうちに岳人に抱き寄せられて…唇に柔らかい感触が。






…いきなりキスされた。





…甘い。とろけてしまいそう。




「…っ!」


唇を離すと、岳人はほんのり紅潮した顔で照れたように笑った。



「…これでいいだろ?」






「…うん、あ、ありがと…」





「来年はちゃんとお祝いしような!」



小さくて可愛くて。




でもとってもかっこいい私の彼氏。




「うん!」








今年の誕生日は忘れられない思い出になりそうだ…。








fin



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