Side dish:Onyx

□7:黒蜥蜴
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上司の召集を受けて集まった男達が、あるビルの一室を目指していた。

仕立ての良い黒スーツに身を固め、いかにも堅気の人間ではない雰囲気を纏った彼らは、同業者同士故の敵対心剥き出しでお互いを牽制しながら長い廊下を練り歩く。

「…ところで、あいつらは捕まったのか?」

廊下を歩く男達の一人が、近くを歩いていた男に声をかける。

「いや…『犬共』が目をつけたらしいから、時間の問題だろうがな。」

声をかけてきた男には顔を向けずに、その男は前を向いたまま返事をする。

その返事を聞いた男は、僅かに肩を竦めた。

「へっ、どうだか…『飼い犬』風情じゃあ役者不足じゃねぇのか?」
「何だぁ?手前ぇんとこ潰されかけてビビったか?」

男からのからかいに竦めた肩を戻して、男は彼を軽く睨む。

「けっ、言ってな…てめぇはあいつらを見てねぇからな…それに、妙なウワサを聞いたのさ…」
「ウワサだぁ?」

訝し気に顔を向けた男を追い越し、上司…彼らの言葉で言えばファミリーのボスがいる部屋の扉を、最初に声をかけた男が数回ノックをした後、扉のノブに手をかける。

「あぁ…あいつらは、ただの便利屋なんかじゃなく…」

男が話の続きをしながら扉を開けると…彼らを出迎えたのはボスではなくて、その姿を見た男達に衝撃が走った。

「よう、雁首(がんくび)揃えてご苦労なこった。」

本来なら、彼らのボスがいるはずの部屋で男達を待っていたのは、ボスが使っている高価な机に不遜に腰掛け、一度見たら夢にまで見てうなされそうな、目に焼き付く赤いコートを着た、銀髪の男。

そして、男達に背を向けていた革張りの椅子がくるりと回って、そこに我が物顔で腰掛けて脚を組み、赤いコートの男と瓜二つの顔で銀髪を後ろに流した、青いコートの男が彼らに顔を向ける。

…男達から恨みを買い、その首に破格の賞金をかけられ逃げ回っているはずの男が、片や不敵な笑みを浮かべ、片や冷たく射抜く様な双眸で、ボスがいるはずの場所から彼らを見渡している。

「て…めぇら…どうやって!?」
「ボ、ボスはどうした!?」

まさか賞金首自ら、こんなにも堂々と敵陣に…しかも自分達の心臓部に突然現れるなど思いもせず、男達が取り乱しながら尋ねる。
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