小雪がちらつく十二月二十六日。
今日は屯所で女中として働いている女の子、鈴ちゃんの誕生日だ。
Merry Christmas
&
Happy Birthday
鈴ちゃんが屯所にやってきたのは今年の四月、丁度桜の花が咲いている時期だった。
彼女はちょっとSっ気があって男勝りで、悪戯好きで、女中という仕事柄動き易いようにといつも男装している。
だからよく男の子に間違われているが、気遣いのよく出来る、働き者の明るい娘だ。
そして、俺の自慢の恋人である。
『あぁ、もう真っ暗だ。
待っててくれてる…ワケ無いか。
あの面子だもんね』
今まではやっていなかったクリスマスパーティーも、今年から彼女の誕生日会と併せてするらしい。
どうして今までやらなかったのかって?
そりゃあクリスマス(とイブ)の日は色々と犯罪が起き易くて、それを防ぐために真選組は殆んどの隊士が出払うからさ。
俺の場合は五日間の出張任務のせいで、イブもクリスマスも、そして鈴ちゃんの誕生日(日中ね)でさえも二人で過ごせなかったんだけど…
『あ〜あ…
折角恋仲になれたってのに、こうも任務ばっかりじゃなァ…』
もうすぐ二ヶ月が経つってのに、デートらしいデートもできてないし…
しかしながらこの任務に付くのは彼女との交際を始める前から決まっていた事だから、文句など言えないのだ。
それにもし「恋人と過ごしたいので誰かと代わらせてほしいです」なんて言いようもんなら、副長に「仕事を何だと思ってんだ」と殴られただろう。
だけどまァ、仮にそうなったとしても、やっぱり言えば良かったかなァ…
殴られてんのはいつもの事なんだし、ひょっとしたら代わらせてくれたかも知れないのに…
『はァ……恨むよ…』
気の弱い俺よ…
ともあれ屯所が見えてきたので、俺は歩みを速めた。
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