〜この手に太陽を〜
□戦場
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『今日の戦果は結構良かったな』
戦場から引き上げながら、隣を歩く桂に話し掛ける銀時。
すると桂は、橄欖色の目をフッと細めた。
「貴様が手助けしてくれているお陰だ」
『…だと良いんだが』
「ああ、何せ"白夜叉"の異名を持つ男だからな」
銀時は数日前から桂の軍の助っ人に入っている。
理由は"強いから"らしい。
銀時は、そっちだって狂乱の貴公子と呼ばれる程強いんだからそれは少し買い被り過ぎではないか、と思いはしたが、
自分の腕にもそこそこ自信が有る事だったので、銀色の頭を気だるげに掻きながら適当に返事をしておいた。
―――−…‥
「銀兄! 小太兄!」
寝床にしている廃寺にもうすぐ帰り着くという時、脇道から小さな影がひょっこりと現れた。
『陽路…今日もちゃんと戻ってこれたな』
「もちろんよ」
『ところでなんだけど…
後ろのソイツって誰?』
辰馬、高杉に続きこちらに向かって来たのは、四十歳になるかならないか程の温和そうな男。
「あたしが敵にやられそうになった時に助けてくれたの」
『そうだったのか…』
「あ、いやいや、それは私の方なんだよ…」
随分と丁寧に頭を下げて自己紹介をした彼の名は、八松というらしい。
陽路は銀時達をぐるりと見回し言った。
「みんなに相談があるんだけど…
八松さんも、あたしたちと一緒に暮らす事ってできないかしら?」
『「「「「へ…?」」」」』
その突然の言葉に驚いたのは元々居た四人だけでなく、八松もだ。
彼は目を丸くして尋ねる。
「しかし、私が居ると邪魔になっちまわないかい?」
そんな八松に、陽路は首を横に振って答える。
「そんな事なんてないわ。
さっきも話したけどお寺は結構広いし、人が多い方がにぎやかで楽しいじゃない」
そして銀時達に向かって、「みんなだってそう思うでしょ?」と言った。
投げ掛けられた彼らは顔を見合わせる。
渋るような顔の者はおらず、誰もその提案に異論は無いようだ。
『俺らも別に構わねェよ。
八松さんさえ嫌じゃなけりゃ、来てくれりゃあ良いさ』
「…そうかい、ありがとう。
それじゃあお言葉に甘えて、宜しくお願いするよ」
こうして廃寺を寝床にする人間、銀時達の仲間がもう一人増えた。
寒さも緩み菜花が咲く、弥生の事だった。
回想陸:休息へ続く…
後書⇒
橄欖色(かんらんしょく)■■