〜この手に太陽を〜
□休息
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暫く上流の方で釣竿を垂らした後、俺は陽路の居る場所まで戻ってきた。
---高杉視点---
『おい、釣果はどうだ?』
「ん〜、まぁそこそこに」
陽路のバケツの中を覗くと、成程、何匹もの魚がいる。
しかもサイズも結構大きい。
『ほぅ…やっぱりお前、釣りも得意なんだな』
「それほどでもないわよ。
晋兄だって、いつも大量じゃない」
俺の手にしていたバケツを見て、陽路もそう言った。
『まァそう言われりゃあ、そうなんだが、な…』
陽路の釣糸と絡まない近さの場所に腰を降ろして川に釣糸を投げ入れると、すぐに魚が食い付いてきた。
今日は調子が良いようだ。
『ところで、銀時らは何してんだ?』
「川海老を獲ってるらしいんだけど…
あれは完全にふざけ合いになってるわね」
バカ共は下流の方で騒いでいた。
…あ、銀時の奴、ヅラと坂本の足を引っ掛けて転ばせやがったぞ…
しかも頭を水ん中に押さえ付けている…
今日はヅラと坂本の命日になりそうだな…
「なんか、こうしてると平和な感じがするわね…」
真っ白な雲の浮かぶ天色の夏空を見上げた陽路は、金の眼を眩しそうに細めてふとそう呟いた。
『あァ…確かにな…』
下流で騒いでいる三人や、対岸の木陰でうたた寝をしている八松さん。
陽光を反射する水面や、緑濃い樹々。
そして表情はあまり変わっていないが楽しげに釣りをしているコイツを見ていると、本当にそんな気がしてくるんだから不思議なモンだ。
…だが確かに、俺達が天人らと戦をしている事には変わりは無い。
隣で凄腕の漁師の如く次々と魚を釣り上げていくこの幼い娘も、立派な侍の一人。
しかも天下に名を馳せる、"泥梨姫"ときている。
最初会った時はいきなり殴り掛かってきたし(まァあれは俺が悪かった)、一体どこの小娘かと思ったんだがな…
今となれば、居なくてはならない人間の一人だ。
「うん、良い感じに釣れたわね。
八松さんも呼んで、銀兄たちの所に行こう」
『あァ、そうだな』
灰髪を揺らして歩き出す陽路に続き、俺も本日の収穫を手にして立ち上がるのだった。
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