〜この手に太陽を〜
□失踪
2ページ/6ページ
─如月初旬─
月明かりも届かない程、樹々が鬱蒼と繁る森。
そこかしこに人間や天人の屍が転がっている。
…その中には、今まで共に戦ってきた奴らも居るのだろう。
俺はそんな場所を、必死で駆け回っていた。
『陽路ィィィッ!!
返事をしろォォッ!!
陽路ィィッ…!!』
今日は陽路と一緒に戦場に出た。
刀を振っている内に、いつの間にか互いを見失っていた。
まァそれは、然程珍しい事じゃあない。
問題は、夕刻には戦いは終わっていたのに、日付を越えても彼女が戻って来なかった事だ。
だからこうして捜している。
『っ!?』
―ドサッ
何かにつまづき転んでしまった。
見るとそれは人間の死体だった。
小柄なそれを陽路かと思ってしまい一瞬ドキリとしたが、直ぐ様起き上がり再び走り出した…
―――−…‥
東の空が微かに白み始めた頃、もしかしたら陽路が戻っているかも知れないと思った俺は、陣営に引き返す。
『ん…あれは……』
すると門に寄り掛かる、左目を包帯で覆った男の姿が見えた。
『高杉…
陽路は帰ってきたか?』
そう尋ねると、奴は頭(かぶり)を振る。
『くそッ!』
「オイ待て」
捜索を再開しようとすると、腕を掴まれ引き止められた。
『何だよ…』
「今日はもう、この辺りで止めておけ。
ヅラももう中に居る」
『でも!』
「明日早朝、敵陣に奇襲を仕掛ける事になっている。
少しでも多く体力を残しておくべきだ。
それに陽路が抜けた分、作戦を練り直さねーといけねェ。
その会議には銀時、テメーも参加しなきゃなんねェんだぜ。
…テメーまで外に出てったままってのは、困るんだがな」
『‥‥‥‥っ』
なんて薄情な奴なんだ、陽路の事が心配じゃねェのか?
感情を感じられない声色とあまりにも冷静なその言葉に、思わずそんな事を口走りそうになる。
しかしコイツの言っている事は尤もだ。
だから俺は部屋に戻る事にした。
それに高杉だって、陽路が居なくなった事を本当に心配している。
その証拠に、ずっと外に居たんだろう、さっき俺を掴んできた奴の手は着物ごしでも分かる程に冷えて切っていて、
俺が建物内に入った瞬間、門の木戸を殴り付けるダァンという鈍い音が聞えてきた。
クソッ…
本当にどこに居るんだよ…
どこに行っちまったんだよ…
陽路…
⇒