〜この手に太陽を〜

□失踪
4ページ/6ページ






如月末、雪が降り積む日。


戦が、十数年にも渡る攘夷戦争が終わった。



負けたのは…

俺達、攘夷志士だった。



その報せを受けた時、

高杉は少ない荷物を纏めてどこかへ行ってしまった。
もう戻ってくる事は無いだろう。

ヅラの目には涙が浮かんでいた。
奴のそれを見たのは数年振りだった。


他の連中も嘆き悲しんだり腹立たしげに床を殴るなど、皆それぞれの反応だった。


俺はと言うと、予想していた事とは言え、ただただ…虚しいだけだった。



俺達は…俺は…

何の為に戦ってきたんだろう…



『松陽先生…』


今は亡き師の名を呟く。



最初は捕らわれた貴方を救い出すために、大切なものを護るために戦っていたけど…


結局、貴方を救う事は叶わなかった…

多くの仲間も失ってしまった…

何も残らなかったんだ…


それでもこれで、良かったと思うか…?

俺のやってきた事は、間違ってなかったと思うか…?




屋外に出ると、其処は一面の銀世界。

空気は身を切るように冷たい。


空からは雪が降ってきていたが、それも暫くすれば止み、太陽が顔を出す。



『‥‥‥‥‥。』



雪の白は陽光を反射し、更に白く照り輝く。


その輝きはとても眩しくて、目が痛く感じる程だ。


眩しさから逃げる様に上を仰ぎ見たが、そこには太陽が居るもんだから、やっぱり目が痛くなった。



あァ…眩しい…

眩しいなァ…


本当に…眩しい…



『…っ、……。』



世界が滲む。

世界が歪む。


拳を握り締めようとも、歯を食い縛ろうとも、それは元には戻らない。


嗚咽を堪えるのが精一杯。




あァ…

これからどうやって生きてくか

決めなきゃなんねェなぁ…





―――――−…‥
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ