〜みんなの日常〜

□プレゼントには注意しろ
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※本作では、ヒロインが隊士設定となっております。






――――――――――…






六月末…

毎日の様に雨が続くこの月、



「こんにちは。
お久し振りですね」



とある公園の東屋の下に座る、遊行僧姿の長髪の男の前に、帯刀した着流し姿の少年…いや、若い娘が現れた。



「あァ…お主か。
元気にしていたか?」



長髪の男…攘夷浪士の桂小太郎がそう尋ねると、男装娘…鈴はにこりと頬笑んで「はい」と答える。


そして何かを思い出したように巾着を探った。



「えっと…銀さんから聞いたんですけど、ヅラさん今月お誕生日ですよね?」


「ん? あァそうだが、俺はヅラさんじゃなくて桂だ」


「はい、プレゼントです。
クッキー焼いたんで、食べて下さい。
結構自信作なんですよ」


「‥‥‥‥‥‥。」



差し出されたその小袋を、若干警戒しながら見つめる桂。


無理もないだろう。

幾ら知り合いとは言え目の前の娘は真選組隊士であり、その仕事には攘夷派の取締まりも含まれているのだから。



「毒なんか入れてませんから。
…折角ですから一緒に食べましょうよ。
飲み物も奢ります」



しかし鈴はそんな彼を安心させるようにそう言い、自動販売機に走っていった。






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「ふむ、本当に美味いな」


「良かったぁ、喜んで頂けて」



褒められて嬉しそうに顔を綻ばせる鈴。


連日の雨のせいで空気は快適とは言い難いが、その笑顔に桂の心はほんわりとなる。



「お主はきっと、良い嫁になれるぞ」


「そうですか?
だと良いんですけどねぇ」


「日本を改革させる俺が言っているのだから、そうに決まっている。
ま、鈴殿には悪いが、好みは人妻だから他を当たってくれよな。
はっはっはっは!」


「大丈夫です。
私も奇人変人には興味有りませんから」



高らかに笑う桂に、鈴は白い目を向け静かに溜め息をついた。



「あ。そう言えば、もう一つプレゼントが有るんだった」


「何! まだくれるのか?」


「ええ。だから手を出して下さい」


「分かった」



桂は左手を上に向け、鈴に差し出す。


次の瞬間、


―ガチャン

「ん?」


その手首に手錠が掛かった。



「え? え!?」



突然の事に混乱する桂。


その間に手錠のもう片方は、東屋の支柱に繋げられる。



「ちょっ!鈴殿!?
一体何をするのだ!」


「何って、真選組の仕事ですけど」


「お主今日は非番ではなかったのか!?」


「誰も非番だなんて言ってませんよ」


「しかし隊服を着ていないではないか!」


「ああ、訳有りで今日の巡察は私服なんです」



そう答えた鈴は、無線機能付きの携帯電話を取り出した。



「…こちら副長直属隊士海堂です。
かぶき町○×公園にて攘夷浪士の桂小太郎を捕縛しました。
早急にパトカー回して下さい」


「ちょっとォォォッ!?
どうしてそんな事をするのだ!?
さっきまで良い雰囲気だったではないか!!」



桂は悲痛な声を上げるが、鈴は耳に入っていないかのように、


「…ったくあのドS野郎勤務中だってのにまた姿眩ましやがって…
マジ面倒臭ぇよニコチン野郎に叱られんのは私もなんだぞ…
大体どうしてドS野郎の見張りも隊務の内に入ってんだよ…」


と、ぶつぶつ愚痴り始める。



「おいィィィィッッ!!
人の話を聞かぬかァァァッッ!!」



そして雨の公園には、可哀想な攘夷浪士の叫び声が再び響くのだった。





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その後の鈴と沖田の会話…



「あーあ。おめェがボヤボヤしてっから桂が逃げちまった」


「何他人に責任擦り付けてんだ。
あんたがバズーカぶっ放して、東屋を破壊したから逃げたんでしょうがよ」


「あ、そうだ。
クッキーまだ残ってるのかィ?」


「反省はしねぇのかよ…
まぁ良いや。

…クッキーって、万事屋さんに持っていくために作ったやつですよね?
それならまだ少しだけ残ってますよ」


「そりゃ良かった。
さっきクッキーに合うって評判の紅茶を買ってきたんでィ。
帰ったら一緒に飲もうぜィ」


「あぁ、それは良いですねぇ。

勿論溜まってる書類は自分でやって下さいよ」


「チッ」


「舌打ちすんなよ。
私を物で釣ろうたって、そう簡単にはいきませんからね」








〜終わり〜








【後書き】


桂さん、お誕生日おめでとう。
全然祝う内容じゃなかったけど。
沖田に落ち持ってかれてるけど。

取り敢えずボケキャラなのにツッコミさせてごめんなさい。



はい、と言う訳で、久し振りの桂さんでした。

鈴ちゃんが作ったクッキーは、桂のために作った物ではありません。
作中に有る通り、万事屋三人のための物です。
単に余ったやつを持ち歩いていただけです。



2012年6月14日(木)

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