〜みんなの日常〜
□歌う女の子
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時系列:
一年目五月(壱章と弐章の間)
―――――−…‥
風薫る五月。
真選組の屯所では、美しい歌声が響いていた。
(誰の声だ?)
そう思い、十番隊隊長の原田は庭へ足を進める。
その声の主は真選組隊士…
ではなく、女中として働いている少女だ。
『鈴ちゃ〜ん。
洗濯物大変じゃない?
手伝おうか?』
「あ、原田さんこんにちは。
もうすぐ終わりますので大丈夫ですよ」
そう言って彼女は洗濯物を干し続けながら、また歌い始める。
「♪〜♪〜 ♪♪〜」
『歌上手いなァ…』
原田は聞き惚れているのか、うっとりしており顔に締まりが無い。
沖田が見たら、間違いなくからかってくるだろう。
「うんうん。
俺もそう思いますよ」
『うわっ!
…吉村か。なんだいきなり?』
原田に話しかけてきたのは監察方の吉村だった。
「さっきから呼んでましたよ」
『ああ、済まなかった。
…どうしたんだ?』
「いや、大した用じゃないですけど。
お土産買ってきたから皆で食べようって、局長が言っていただけなんで。
それにしても、鈴ちゃんホントに歌上手いですよねぇ」
『今までは屯所内で聞こえる歌と言えば、宴会の時くらいだったからな。
…なんか信じらんねぇ』
「確かにですね。
…あれ? この歌って…!?」
鈴はさっきとは違う、アップテンポの歌を歌い出していた。
それに対して何故か焦っている吉村。
『どうしたん……あ。
…ああ、あの歌だよι
副長に聞かれるとちょっとマズイよな…
鈴ちゃん!
ちょっと良いか!?』
「はい。どうなさいましたか?」
鈴はこちらへ来て尋ねる。
洗濯物は干し終わったようだ。
『あ〜、さっき歌ってた歌なんだがな。屯所内で歌うのは控えて欲しいんだ』
「ぇえ〜! どうしてですか!?
結構気に入ってるのに…」
「でも、僕達その歌に良い思い出が無くて…
というか…」
―――−…‥
『と言うわけで、特に副長が大分、な?』
原田と吉村は彼女に理由を話した。
「そういう事だったんですねぇ…
…ぷっ!
土方さん可笑しぃ〜!
あっははは!」
「そんなに笑ったら失礼だよ…
まぁその件はこれまでとして、局長がお土産買って来てるから食べにいく?」
「お土産!?
行って来まっす!!」
お土産と聞くなり鈴は瞳を輝かせ、かなりのスピードで近藤の部屋へと駆けて行った。
『‥‥‥、元気だな』
そんな彼女を見て、残された二人は苦笑いをしてしまった。
「…まぁ、良いんじゃないですか?
あんな子が居るのも」
『ん〜 そうだな。鈴ちゃんが来てから屯所が明るくなったしな』
―――−…‥
その日の晩…
屯所中に土方の怒号が響いた。
「誰だァッ!! 俺の部屋の前にラジカセ置いて"×公なんざクソくらえ"流してんのはッ!! さっさと出て来やがれ切腹だァァッ!!」
《成功しましたね!総悟さん!》
〈だねィ!鈴!〉
『「ったくあいつらは…ι」』
〜END〜
元ネタ(?)は「一日局長には気を付けロッテンマイヤーさん」です。
この話では、土方さんは寺院破壊と「三回回ってワン」を忘れられてません。
だからその事を思い出させる「×公なんざクソ食らえ」が嫌なんです。
(それでなくても自分達を侮辱するような歌ですからね)
対して総悟くんはそんなことは全く気にして無いんです(笑)
そして鈴ちゃん、「食い意地張ってるみたいで恥ずかしい」と言って顔を赤らめた貴女は何処へ…
因みに管理人はお通ちゃんの歌が大好きです(笑)