〜みんなの日常〜

□俺の恋人
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山崎と鈴が恋人設定
時系列は二年目九月


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屯所の備品管理庫、


ふと後ろを向くと、俺と同じように在庫確認をしている少女、鈴ちゃんの姿が目に入った。











『ねぇ、』



傍に寄って声を掛けると、彼女はこちらも見ずに作業を続けながら返事した。



「何ですか?」


『いや、特に用って訳じゃないんだけどさ…』



俺は語尾をぼやかし、低い位置で一つに結われた彼女の癖気味な黒髪を弄る。



「擽ったいのでやめて下さい。
そして用が無いのでしたら仕事に戻って下さい、鬱陶しい」



いつものように、割りとグサリとくる言葉で叱られた。


しかしそんな事で引き下がる俺ではない。



『ねぇ、構ってよ』


最近忙しくて、君と居る時間が少なくて、ちょっと寂しいんだよね



「‥‥‥‥‥。」



無反応。


今度は彼女の右肩に顎を乗せ、甘え声で再度請うてみる。



『構ってほしいな』



すると、俺のうなじの上側に、彼女の右手がフワリと添えられた。


後ろから口付けをねだれば、いつもこうしてくれるのだ。


そして更に左手が、俺の頭頂部に回され…



─ぐぃっ


『んぐぉぅぅぅぇ!!?』



肩で首を圧迫するように、頭を前向けに倒された。



ちょォォォッ!!

『ぐびじまるぐびじまっでる!!』

苦しいって!! 息できないって!!



頭を拘束している腕を絶体絶命のレスラーの如く叩くと、鈴ちゃんはやっと俺を解放してくれる。



『げほっ! げほっ!
…い、いきなり何すんだよ!
キスしてくれるんじゃなかったのォ!?』


「は? キスだぁ?
何フザけた事抜かしてんだ。
私は日頃から、"職務中にこういう事するのは嫌だからやらない、だからそっちもしてくるな"っつってる筈なんだがな。
お前の脳味噌は存在感同様に蟻レベルか、ミジンコレベルか」



そう吐き捨てる彼女の目は、氷のように冷たかった。



『うん、ごめんなさい…』


だけど蟻って…ミジンコって…

確かに存在感は無いけどさ、そこまで言わなくても…



しょんぼりと作業に戻る俺。



はぁ…
やっぱり無駄だったか…

時と場所を考えない事には、何が有ろうとこの娘には通用しない…


と言うか、いつも結構な頻度で副長とかに悪戯してるのに…

『どうしてこういう事には真面目なんだ…』


「おい、口動かす暇が有るなら手ぇ動かせよジミ崎」



しまった、どうやら聞こえてしまったのか。

口調が荒いままだ。



『はい…』



今度こそ、ちゃんと作業しなければ…







「山崎さん、」



それから暫くたった頃、ふと鈴ちゃんに名前を呼ばれる。


振り返ると、彼女は笑みを浮かべていた。



「今日は満月だそうです。
なので夜十時に、私の部屋の屋根の上に来て下さい。
お摘み作って待ってます」


『…うん』



とは言え、気持ちは十分伝わっているようだ。


それが何だか嬉しくて、日中、俺の顔はずっと緩んでいた。



…だからなのか、副長や沖田隊長や原田から「気色悪い」と言われ、局長には「やっぱり好きな女の事を考えると、皆同じ表情になっちまうよな」と同族意識を持たれてしまった。







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