〜みんなの日常〜

□海水浴場に来たなら泳げ
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銀時と新八は、普段働き詰めの鈴にリフレッシュ休暇をと、彼女を海水浴に連れてきたのだが…


ヒロイン隊士設定、微切ほのぼの
時系列は三年目以降の夏



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海堂鈴。


彼女は真選組隊士ではあるが、万事屋一行と結構仲が良い。


だから万事屋の銀時、新八、神楽は、普段働き詰めの彼女の為にリフレッシュ休暇(ハイキング)を計画した。



当日、神楽が夏風邪をひいてしまった事でハイキングは延期になり、その変わりに彼女を海に連れてきたのだが…



さあ泳ごうという段階になっても、鈴は未だ着物を着たままだった。













「それ、脱がねェの?
やっぱり野郎二人だけとじゃ不満か?」


「神楽ちゃんも楽しんできてって言ってたんだから、遠慮無く泳いで良いんだよ?
あ…ひょっとして迷惑だったかな?」



パラソルの陰に座る鈴に、銀時と新八は声を掛ける。


しかし彼女は、静かに首を横に振った。



『違いますよ』


「じゃあ、どうして…」



それだけの仕草では理由が分からなくて、新八がそう再び尋ねると、今度は力無い苦笑いを向けてくる。



『海に来られたのはとっても嬉しいんだけど、ほら私、仕事で怪我する事って少なくはないでしょう?
別に私は構わないんだけど、ちょっと…ね』



人々の楽しげに遊ぶ姿に視線を移す鈴。


それで二人は、彼女が何を言わんとしているのかを悟った。



今は丁度着物に隠れているので分からないが、
彼女の躰には隊務をしていく内にできてしまった傷痕が、大小、古い物から新しい物まで幾つも有る。


勿論、どんな大怪我をする事も厭わない覚悟で入隊した彼女にとって、「自分の躰が傷痕だらけ」という事自体は悩みではない。

寧ろ真選組隊士である証として、受取っている節も有る。



しかし一般市民にとっては、男ならともかくとして、女の躰が傷だらけというのは珍し過ぎる。

彼女の心の内は判らないし、隊服を脱いだ彼女が真選組だと気付く人もそれ程多いわけではない。


なので彼らは彼女が素肌を見せれば好奇の目を向けるし、中には本気で心配してくる人もいる。


故に鈴はその傷痕を人目に曝したくないと、端的に言えば、「治安を維持する立場にある自身が騒ぎの原因になるわけにはいかない」と考えているのだ。



銀時と新八は、そんな鈴の気持ちを汲み取り、顔を見合せた後ニカッと笑った。



「ん、解ったよ。
そんなら無理に水着だけになる必要は無ェさ」


と、彼女の頭をくしゃりと撫でる銀時。



「幸いここは着衣水泳オッケーみたいだから、Tシャツとハーフパンツに着替えたら良いよ」


と、彼女の手を取って立ち上がらせる新八。



すると鈴も、連られて笑顔になった。



『ありがとうございます、銀さん、新八君』


「良いよ良いよ」


「…あ、でもお前、服着たままで泳げるか?」


『はい、大丈夫です。
これでも真選組隊士ですから、それしきの事問題有りません』


「そっか。
まァもしダメだっても、僕と銀さんが付いてるから」


『うん! もし溺れそうになったら二人の頭を浮き変わりにするね!
これで私も安心だ!』


「ちょ!ちょ!お嬢さぁん!?
何良い笑顔でものっそい残酷な事言ってんの!?
俺らは安心できねェよ!」


「それじゃあ反対に僕らが溺れちゃうからね!
僕らが救助される側になっちゃうからね!」


『あははははっ!』



人々で賑わっている砂浜に、二人の男の焦ってつっこむ声と一人の女の愉しげな笑い声が響いた。


海の水面は、真夏の日射しにキラキラと輝いていた。





〜終〜







後書き↓


書けました、何とか。

管理人的には満足だけど、こんな話って有りなんですかね?

でも本篇では万事屋たちとあまり絡ませられてないので、どうしても書きたかったんです!

の割には神楽ちゃん居ないですけどね。

海なんで彼女まで泳がす訳にはいかないから、泣く泣く引っ込んでもらいました。


いつか神楽ちゃんとの話を描きたいです!



2012年12月24日
 

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