〜みんなの日常〜

□女の痛みは男には解らない
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時系列:二年目冬(二月かな?)



※注意※

月経ネタが入っていますので、苦手な方は御注意下さい。

ヒロイン隊士設定。







────────────…








『あ、鈴ちゃん』



とある日の朝、食堂の前に隊服姿の少女を見付けた十番隊隊長原田は挨拶をした。


しかし、いつもはすぐに返ってくる筈の優しい笑顔と元気な「おはようございます」が無く、彼女はそのまま食堂へと入っていく。


そればかりか、ちらりと此方を見遣ったその顔は顰められていた。



『オ、オイどうしたんだ?』



思い当たる節は全く無かったのだが、何かしら気に障る事をしてしまったのかも知れないと原田は鈴を追い掛ける。



『なァ、俺何かしちまったか?』



そして前を行く小さな肩を掴んだ次の瞬間…


『うおッ!?』


彼は床に倒れていた。


鈴に四方投げをかまされたのだ。



朝食をとりにきた隊士達は、一体何事だと騒然となる。


技を食らった原田自身も、「いきなり何すんだよ!」と飛び起きながら抗議した。


それでも鈴は顔を顰めたままだ。



『ちょ、聞いてんのか?』



そしてもう一度抗議した時、更に食堂が騒めき立った。


不意に少女が腹を抱え込み、崩れるようにしてその場に蹲ったのだ。



『オイ! 大丈夫か!?
腹でも痛いのか!?』



その躰を揺すると、肯定の頷きと共に苦し気な呻き声と荒い息が返ってきた。


ぎゅっと閉じられた両目からは、普段はあまり見られない涙が零れ落ちている。



──こりゃあ横になって休ませた方が良いよな…


『自分で歩けるか?』


「無、理…っ…」


『そうか…

鈴ちゃんは俺に任せて、お前らは早く飯食って仕事に移れ』



心配そうにこちらの様子を伺う隊士達にそう告げるが早いか、原田は鈴を抱き上げ医務室に向かった。





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途中自分の部屋で構わないと言われた原田は、鈴の部屋まで来ていた。



『ほら、蒲団敷いたぜ』


「はい…」


『…鎮痛剤持ってきてやるから、その間に寝間着に着替えろ』



そう原田が言うと、未だに涙を零しながらも鈴は答えた。



「それなら…っ、女中さんから…月のもの用のを貰ってきてくれませんか…?」


『え……あァ、わかった』


「ごめんなさい…
こんな事っ、頼んで…」


『いや、気にすんな』


「それと…」


『ん?』


「食堂での事も…ごめんなさい…
痛みのあまり気が立ってまして…つい…」


『…あァ、わかったよ。
俺もしつこくし過ぎたんだしな』



原田は"なんだそうだったのか"と苦笑いをしながら、薬を取りに部屋を後にした。





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昼過ぎ、鈴の部屋には土方が来ていた。



『原田から聞いたが、大丈夫だっか?』


「はい…今は何とか…」


『つーか、たかが生理痛ぐれェで仕事休むなよな…』



土方が呆れたようにそうぼそりと呟いた瞬間、鈴の纏っている空気が一気に冷える。



『な…なんだよ…』


「出ていけ」


『ぁあ?』



いきなり睨まれた土方も機嫌が悪くなり、こめかみに青筋をたてて睨み返す。


しかし鈴が怯む事は無かった。



「出ていけって言ってんだ」


『お前っ、見舞いに来た相手にそれァ無ェだろ!?』


「見舞いだぁ?
単に嫌味言いに来ただけだじゃねーか!」


『いや、そんなつもりは…!』


「早く出ていけよ!
躰中の血ぃ全部抜かれちまえクソ野郎ぉぉっ!」



そして枕やら本やら卓上時計を投げ付られ、土方は反論する間も無く部屋を追い出された。










『ったく何なんだよ…』



縁側に腰を下ろし、苛つきを抑えるために煙草を吹かしす。


そこへ原田がやって来た。



「鈴ちゃんの様子、どうでした?」


『どうも何も、追い返された』


「はっは〜、あの子の気に障る事言ったんでしょう」


『まァ、多分そうだ…』



土方は溜め息交じりに鈴の部屋での事を話す。


すると原田が苦笑いをしながら言った。



「それは言っちゃ駄目っすよ〜
鈴ちゃん曰く、"男の理解の範疇を越える苦痛"なんだから。
なんでも下痢した時の痛み方と同時に、腹と腰の筋肉と内臓をグッチャグチャに掻き回されるような痛み方をするらしいっすよ。
だから躰に力も入らないとか」


『‥‥‥‥‥。』


「それに今日は薬が殆ど効かなかったみたいで、ショック症状でリバースしてたし三時間近く泣き通しだったし。

そもそも風邪ひいて熱が出てようが浪士との斬り合いで怪我してようが、自ら進んで働くあの子が休むんすよ?」


『そ…そうか…』



土方は煙草の火を揉み消し立ち上がった。



『…俺、謝ってくるわ』


「あァ、頑張ってきて下さいね」





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「海堂、さっきは悪かった。
お前の気も考えずにあんな事言っちまって」


『はい。ご理解下さったのならもう構いませんよ』



珍しく頭を下げて謝る土方に、鈴は優しい笑顔を向けた。



「それにしてもお前、倒れるくれェ酷い方だったか?
今までは大丈夫そうだったと思うんだが…」


『ああ、痛みは酷い方ですよ?
だけど月経不順で…あ、これも前からなんですけど、この一年なんか片手で数えられる程しか来てなくて、だから鎮痛剤を買い忘れてたんです。
いや〜うっかりしてました、あははははっ!』



本人は何でも無いように言っているが、土方はその顔に心配の色を浮かべる。


それもその筈。

痛みが酷いのも月経不順が起こるのも、病気でない場合、極度のストレスと激し過ぎる運動に原因か有るからだ。


しかしこの仕事を選んだのは、他ならぬ鈴自身だ。


その事も解っている土方はすぐに表情を正し、また別の事を尋ねた。



「その…周期が崩れてる事、山崎は知ってんのか?」


『いや、知りませんけど?』


「ならちゃんと伝えておけ。
二人の将来に関わるかも知れねェんだからよ」


『…そうですね、解りました。
気遣って下さってありがとうございます、土方さん』



鈴は再びフワリと微笑んだ。


そして、

──やっぱり真選組の彼らは、本当に私の為を思ってくれてるんだな──

と、嬉しい気持ちで一杯になるのだった。






〜終わり〜








後書き


やってしまいました、生理ネタ。
(このネタ書いてる人って意外といる事にちょっと驚く今日この頃)


解る人には解ると思うんですが、本当に生理痛って辛いですよね…

管理人は月経不順ではないですが、長期間休暇が重ならないと生理痛が酷くなってリバースまですることが多々あります。

何か効果的な改善方々は無いでしょうか?


まぁ原田さんが出せたので嬉しいです。
でももっと本編に彼を出したい…


ちなみに「四方投げ」は、合気術の技の一つです。
興味が有れば、調べてみると良いかも(*^^*)



2013年2月4日

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