幸せのカタチ
□第五話
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「何・・・・してんのよっ・・・・・」
「うるせっ」
「子供のくせに」
「お前だってガキだろうが!」
「私は違うわよ!一緒にしないで!」
「ハッ・・・・俺様の方が大人だな」
「何よっ・・・・・何よっ・・・・さっきまではあんたの方が泣きそうだったくせにっ」
「なっ、俺様がそんな軟なわけねーだろ」
「泣いてたくせに」
「てめっ」
媚びることなく真っ直ぐに見られたのは初めてな気がした。
暫くすると先程までの天気が嘘のように雨が降り出す。
急いで荷物を纏めていると、女がこちらを見て口を開く。
「家ここから近いけど、雨宿りする気があるなら入れてあげるけど?」
「・・・・・フッ、どうしてもって言うなら行ってやらなくもねーな」
「うん、バイバイ」
「おいっ!」
「ふんっ」
そのまま背を向けて歩いていく女を慌てて追う。
本当に自分の周りにいないタイプの女だ。
女の言う通り、そう離れた場所ではない所にマンションがあった。
俺様程とは言えないがそれなりの家らしい事は、中に入ってすぐ思った。
「適当に座ってて、コーヒーと紅茶があるけど・・・・・どっち?」
「入られるのか?」
「あんたの口に合うかわからないけど、ココにもそれなりの物があるみたいだから大丈夫だと思うけど?」
「みたいって自分の家なのにわからないのか?」
「・・・・・・最近ココに越して来て、ココにあるものは・・・・親戚?らしき人が用意したものだからまだ自分でも把握できてないのよ」
「親戚なのに疑問系って可笑しくないか?」
「・・・・・あんた一々五月蝿い」
「なっ!?・・・・親は?」
その時、それは禁句なのだと感じた。
お茶の用意をしていた手を止めた女の顔は明らかに歪んだ。
「さあ・・・・・死んでんじゃない?」
「・・・・・・お前」
何となく、泣いていた理由はコレなんだろうと思った。
インサイトなんて使わなくても分かる程、辛そうな顔で吐き捨てるように言う。
自分の親の事なのに知らないと言う。
コレがコイツの言う、許容範囲を超えた状況と言うやつなんだろう。