恋 〜消えない罪〜

□第四話
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 「心配してないで、うん、無理はしないから、平気、うん、大丈夫だって」


 何度も念を押すように心配している母親からの電話に受け答えしながらテーブルの上に作った朝食を並べていく。

 今日はついにやってきた立海大付属中学入学式だ。

 入学式一ヶ月前に突然父親の会社が急成長して海外進出し、その代表として選ばれてしまった父親が泣く泣く母親と姉を連れて海外へと旅立った事はまだ記憶に新しい。

 所謂、転勤と言うやつだ。

 私の身体の事もありギリギリまで返事を渋っていたが、父親にとってもこの仕事を受ける事がプラスになることは明らかで必死に説得した。

 何も出来ない父親を一人で海外に行かせられない為に母親も同行する事になったのだが、この母親を説得するのに何よりも骨をおった。

 超が着く過保護、最後は涙ながら連れて行くだのなんだの叫んでいた。

 着いて行こうにもこの身体にはまだ飛行機での長旅は危険で無理だと分かると今度は行かないと言い出して、家族全員で説得してなんとか海外でも使える携帯電話で逐一連絡報告することで納得してくれたのだ。

 姉もそれについていく事になり、日本に残るのは私と仁王だけになった。

 掛かり付け医のいる病院の近くにある超高級マンション、その最上階にある部屋を用意出来た事も日本に残る決定打になった。

 まあ、この部屋は神様が用意した部屋なんだけど。

 出した筈もない懸賞で豪華マンションを当てたことになっている。

 荷物の整理も終わり、念願(?)の二人暮らしのスタートだ。

 家事全般は私がやる予定。

 仁王は当番とかなんとか言っていたけど、これから部活で忙しくなる仁王にそんな事はさせられないし、何よりもともと一人暮らしをしていた私には簡単な事だから譲らないつもりだ。
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