初 恋
□第一話
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自分に告白してきた人が入学してから上級生にも同級生にも人気を集めている人だと知ったのは、告白を受けたその日の夜だった。
どんな人なのか知りたくて友人に送ったメール、そのメールの返信は意外なモノだった。
『一年の幸村君を知らないかって?優美あんた本気で言ってんの?幸村君って言ったら入学式から注目されてる美少年じゃんw知らないほうが可笑しいって!』
入学してから数ヶ月がたったというのに今まで知らなかった自分はどうしたらいいのだろう。
中学生になって新しい環境の変化に毎日がドキドキだった。
変わった生活環境だけでも胸がいっぱいになるくらい毎日が楽しいのに、他の人の事まで目がいかなかった。
ただ、告白をされた時におもったのは。
こんなに綺麗で素敵な人が自分なんかに告白するのは何かの間違いでは?
なのに、彼はハッキリと私の事が好きだと言った。
ドキドキした。
生まれて初めて異性から告白されて頭が真っ白になった。
だけど、真剣な目をしていたから、だから余計に簡単に答えることが出来ないと思った。
口から出た言葉は断りの言葉、なのに彼は、必死に知ってほしいと言ってくれた。
良いところなんて自分では思いつかない私なんかにそう言ってくれる事だけでも嬉しかった、だから。
『ッ・・・・・お、お友達からで・・・いいなら』
気がつくとそう答えていた。
目の前の綺麗な瞳から涙零れた瞬間、胸が凄くドキドキした。
初めて話をしたのは数分前、なのに、彼の事を知りたいと思った。
そんな事が昨日あった。
交換した電話番号とメールアドレス。
朝、着替えをしていると届いた一通のメールは彼、幸村精市君からだった。
受信メール
XX/07/02/06:40
From 幸村精市君
題 おはよう
もう起きてるかな?
まだ寝ていたら起こしてごめん。
良かったら一緒に登校したいんだけど駄目かな?
何時も花壇の水遣りに行くから早く家を出ている、朝錬をしている幸村君と登校する事は可能だけど、一気に緊張してくる。
慌てて着替えを済ませて鞄を持つ。
緊張から震える手で必死に返信を打つ。
返信するとすぐに返事が来て、急いで家から出た。
待ち合わせである駅まで走っていく。
運動が得意と言う訳ではないから、たったこの距離を走っただけで息切れしてしまう事に情けなさを感じた。
「藤原さん、おはよう」
「お、おは、おはようござ、います」
「フフ、走ってきたの?そんなに急がなくても良かったのに」
「い、いぇ、待たせる訳にはっ」
「ありがとう、少し休んでいく?」
「いえ!もう平気です」
「そっか、じゃあ行こうか」
「はっはい」
やっぱり何度も見ても綺麗な人だと思う。
早い時間だから登校している生徒は少ない。
海岸沿いを歩いて向かう学校、それだけの事なのにこんなに緊張してしまう。
「まだ実感ないな」
「えっ?」
「藤原さんとこうして朝、一緒に登校できるなんて」
「わっ、わたしも緊張してて」
「フフ、実は俺も緊張してる」
「えっ!?」
「昨日から藤原さんの前だと緊張しっぱなしだよ俺」
そう言って朝日をバックに微笑んだ幸村君の頬はほんのりと赤かった。
ドキドキする。
今まで感じた事のないような気持ち。
知りたい、もっとこの人の事を知りたい。
「あのさ」
「は、はい」
「良かったら今日のお昼とかさ・・・・一緒に・・・」
「?」
「いや・・・・」
「お昼?」
「あ、うん、一緒に食べない?」
「えっあっ、はいっ」
「良かったっ」
幸村君の一言一言にドキドキしてます。
どうしたんだろう私。
こんなこと今まで経験ないからどうしたらいいのかわらない。
昨日まで見ていた景色なのに、隣に幸村君がいるだけで違ってみえるのは気のせいなのかな?
私の日常が変わった日。
隣にいる彼の笑顔がとても胸に残った。
→ 【あとがき】