恋物語
□第四話 心の傷
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朝、白石と会話したあの日からずっと、何故か毎日テニス部メンバーの勧誘攻撃を受けている。
何で?どうして?私なの?
他にも沢山、マネージャーを希望している子がいるのに、どうして私を勧誘するの?
彼等が何をどう思って行動してるのかサッパリ理解できないけど、彼等の行為は酷く迷惑だった。
「ですから、お断りします」
「そんなこと言わんと、見学だけでも来てくれへん?」
「結構です、お断りします」
こんなやりとりをもう二週間は続けている。
毎日毎日かわるがわる声をかけてくるテニス部に最初は戸惑っていたけれど、ココまでしつこいとイライラして態度が悪くなるのは仕方ないと思う。
彼等のせいで転校生とテニス部の戦いは今日も続くなんて見出しの校内新聞が出回っている位の軽い騒動になっている。
休み時間が終わり教室から帰っていく金色小春を見送り私は大きなため息をつく。
正直、本当に疲れる。
「なんや、悪いな」
「そう思うなら止めて下さい」
「いや、うん。出来へん。監督命令なんや」
「そんなッ」
「なぁ、見学だけでも来いひん?」
「行きません」
「なんか、理由があるん?そんなにテニスが嫌いなん?」
違う、別にテニスが嫌いな訳じゃない。
むしろ大好きだ。
彼等が夢中になるソレを嫌いになるなんて有り得ない。
だけど、でも。
まだ無理なんだ。
自分はまだ彼を過去に出来ていない。
どうして、忘れようと必死になっているのにそれを出来なくさせようとするの?
どうして、毎日が本当に辛いのに、どうして放っておいてくれないの?
「また、その顔」
「え?」
「なあ、なんか辛い事があるなら話してや。一人で抱えても解決できへんことでも二人なら出来るかもしれへんやん?」
「いい加減にして!!!迷惑なの!!どうしてわからないの!?」
「ッ!?」
我慢の限界だった。
こちらの気持ちも考えずにズカスガと入ってこようとする。
クラス中の視線が集まっているのはわかるけど止められなかった。
震える手を強く握りそう怒鳴ればこちらを唖然と見る白石の顔。
わかってる、これは八つ当たりだ。
どうしてかは分からないけど、彼等は単に転校生に気を使っているだけかもしれないのに、その親切心に逆キレをしているだけだと分かっている。
それでも、今の私にはソレは傷口に塩以外の何者でもない。
「もう、やめてッ!本当に迷惑だからッ……放っておいて……」
「………藤原さん」
それだけ言って教室に入ってきた先生に具合が悪くなったと言えば、保健室に行く許可をくれた。
私は白石から逃げるように教室を後にした。
保険医の許可を貰いベットを借りてとにかく眠りたかった。