夢回路

□プロローグ
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 木の板一枚の上に二人、綺麗で透き通ったマリンブルーの海の上をプカプカと静かに漂う。

 体育座りなんて久しぶりしたなぁ、なんて思いながらも瞳は隣で同じように体育座りをしている優子を見た。


 天気は快晴、気温も丁度良く穏やかな波に揺られている。


 優子は静かに自分の両手を握ったり開いたりしながら見る。



 「どったの?」

 「ん?いや、なんかさ……何度経験しても数分前までは子供だった小さい手が大きく成長してるって言うのは……違和感?……違うかぁ、なんか微妙な感覚っていうか、気分?だなぁって思って」

 「ふむ……」


 優子に言われて瞳も同じように自分の手を見つめた。

 確かに二人の身体は数分前までは12歳の子供の身体だった。


 究極危険区なんて大層な名前を付けられた森の中にある自宅で、久しぶりにまったりゴロゴロしていた時までは確かに子供の身体だった。



 「まったくさ、今度会ったらアイツ……ぶっ飛ばす!」

 「今度会ったらって……今度もし会えたとしても違うでしょ?」

 「そうだけどさ、アイツは何処でどう会ってもイラッとさせるのは変わらないからいいでしょ?」

 「いや、よくないよ?」


 そう言って拳を突き上げる瞳に苦笑しながら答えた優子はつい数分前の事を思い出す。


 そもそも『異世界トリップ』なるものに憧れていた時はあった、だが、今となればどうしてそんな事に憧れたのかと疑問になってくる。

 実際に経験してみれば本当に厄介な事この上なかった。

 
 初めてのトリップはもう何十年、否、何百年前になるだろう。

 インターネットなんかでよくみる夢小説のカテゴリーにある『異世界トリップ』をよく好んで歩いていた。

 そうしているうちに親友である瞳と一緒になって共通の好きなジャンルの好きなキャラクターと恋愛又は共闘なんかを目的にストーリーを考え始めた。

 最初は、本当にそれだけだった。

 自分達が作ったヒロインが物語の主役になり、それぞれの漫画やアニメに登場するキャラクター達と恋愛する、それをつくり考えるのが楽しかった。

 なのに、まさか、自分達が実際に経験するとは思わなかった。


 連れてこられたは一つの部屋、その部屋のリビングらしき部屋に自分と同様に連れてこられた瞳がいた。

 どういう状況かわからないでいる自分達の前に現れた一匹のピンク色の羽が生えた、まるでぬいぐるみのような小さなゾウが、事もあろうか喋ったのだ。


 『間違えて貴方達を連れてきてしまった』


 と、そう言って自称神様の使いだと名乗るゾウは言った。


 そして、更に。


 『元の世界に戻るには飛ばされた先々で出たミッションをクリアして次の世界に飛ぶこと』

 『だけど、元の世界に飛べるかどうかは100000000/1の確率』


 と有り得ない事を言った。

 しかもミッションにクリアできない場合は罰ゲームまであると言うのだから最悪。


 ジッとしていても仕方がないとか何とか言われて最初に飛んだのはテニスの○子様。

 与えられたミッションもクリアしてまた、別の世界へと飛ぶ。

 そうして何度も何度も飛び続けてもう何百と言う年月を過ごした。


 一度は元の世界に戻れて『やったー!』なんて思ったのに、元の世界に戻ってまでミッションがあったとは知らなかった二人は、再び罰ゲームの為に別の世界へと飛ばされてしまった。

 何百年と生きてきて、やっと戻れたと言うのにまたふりだし。


 何時戻れるかわからない、もしかしたら次のトリップ先が元の世界かもしれない。

 それは飛ぶまでわからないのだ。

 そんなこんなで今ではどの世界でも親友であった瞳と姉妹設定だった為にすっかり本当の姉妹のように生活している。

 いろんな世界でいろんな経験をして、いろんなパターンを体験したせいで、身体には特殊能力なんてものもついたし、正直、化け物じみてきている気がしなくもない。



 身体は10代の子供でも拳一発で人間を粉砕できる。


 それを化け物と言わずとしてなんとする。


 戦闘能力、鬼道、念、魔法、それぞれいろんな世界で身に着けた能力はリセットされることなくちゃんと蓄積していった。


 元の世界に戻ったとしても、自分の両親よりも既に何倍も年上になった今、気分的には複雑である。


 今更、普通の人間になれるかどうか。


 とにかく、そんな『異世界トリップ』を今回もしてきた。

 数分前にいたのは『ハン○ー×2』の世界。

 購入していた自宅で久しぶりにまったりしていたら、死んだような目をしたやたらと個性的な人間集団のリーダーが胡散臭い笑顔でやってきた時から嫌な予感はしていたのだ。

 ミッションの為に、その彼と恋人同士と言う関係ではあったが、とにかく彼が笑いながら近づいてきた時に良いことがあったためしがない。


 だから、警戒していたのに。


 「あそこでひーちゃんが受け取るから……」

 「ちょっ!!今まで黙ってたと思ったら、いきなり恨み言!?」

 「だって、あからさまに怪しかったでしょ!」

 「優子さんの彼氏じゃん!!」

 「関係ないし!」

 「あるし!!彼女ならあのクロ助管理しといてよ!!」

 「嫌!!」

 「即答!?彼女なのに即答!?」

  瞳がクロロから受け取ったのは一冊の怪しげな本。

 偶然寄った本屋で10億もかけて買ったのに、開けないと言った。

 念がかけられているらしいと聞き、何の疑いもなく瞳がその念を解いたら。


 止めようとした時には遅く、激しい閃光の後気が付けば、ココにいた。


 この見渡す限りの綺麗な海は今まで何度も見てきた。


 「何の世界だと思う?」

 「何のって……海でしょ?海って言ったら……」

 「やっぱり?」

 「でしょ?あれでしょ?」

 「はぁー……時代はどこら辺なんだろう?」

 「ってか、ミッションすら出てないからわかんないね」

 「うーん……とりあえず、ココにいるのも飽きたし移動しようか?」

 「何処に?ログポースないよ?それに制限確認しないで平気?」

 「あっ、そっか」



 すくっと立ち上がりとりあえず今使える力を確認する。

 先程までいた世界の能力を試してみるが、どうやら使用可能らしい。

 一通り試したが特に能力の制限はない。

 と言う事は。


 「加減気をつけないと」

 「だね……」

 「基本は使わないでいこうね、この世界にはこの世界の強さがあるから」

 「ほいほい」


 二人で立ち上がり広い海を見る。

 いくつもある異世界の中の一つの世界。

 叶う事ならこの世界で彼等の命を救えたらと願わずにはいられなかった。


To Be Continued

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