夢回路

□第五話
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 目的の船は見つけた、次にするのは如何にしてあの船に乗るかと言う事だ。

 二人は色々考えたのだが、結局出した答えは、何時かバレる力なら今回は隠さずに行こうと言う事。

 力を見せて納得させて仲間に入れて貰おうと決めた。

 まず探さなければならないのは誰でもいいから白ひげのクルーだ。


 出来れば隊長格がいいのだが、そう都合よくは行かないだろう。


 二人はとりあえず白ひげのクルーを探して島を散策し始めた。






 第五話   メインキャラクター登場





 そう簡単には行かないとは思っていたのだが、こうも誰一人としてクルーを見かけないと心配になってくる。

 もしかして、もうログが貯まって今日にでも船は出てしまうのかと心配して島の人間に聞いてみれば白ひげの船がこの島に来たのは昨晩だと言う。

 ここら辺のログが貯まるのは三日間と聞く。

 ならばまだいる筈なのだが、一人も見かけない。

 困った二人はとりあえず宿を取り、夜の酒場に賭ける事にした。


 ずっと船で寝起きしていたから、ちゃんとしたベットで久しぶりに眠れて安心したのか二人が目を覚ましたのは九時になろうかと言う時間だった。


 着替えをして酒場へと早速向かう。



 「いるかな?」

 「いて貰わないと計画がやり直しだよ」

 「だよね」


 昼間は静かだった通りは、夜になると打って変わって賑やかだ。


 道のあちこちで情婦達が男達に甘く声かけて誘ったり、酒場からは賑やかな音が響いている。

 双子とは嫌でも注目を集めてしまうもの。

 周囲の視線を集めながらも、それを無視して二人は目的の人間達の気配を探す。

 何度も経験すると、自然に酒場に出て行く輩と言うものを覚えてしまう。

 気配だって別の世界では仲間だった人間、探すのだって慣れたものだ。



 「ビンゴ!いた」

 「やりー」

 「とりあえず良かった、それじゃあ行きますか」

 「うい!」



 見つけた気配のある酒場へと向かう。

 賑やかなその酒場のドアを開けて入れば、目的の人物達がいた。

 自然な仕草でカウンターに並んで座る。



 「カシスカクテル2つ」

 「あいよ、お嬢さん方双子かい?美人の双子ってのは珍しいねぇ」

 「あら、おじさんありがとう」

 「お世辞じゃねーよ?」




 陽気なマスターの言葉に笑うと、差し出されたカクテルを口に運ぶ。

 さて、これからどうしよう。

 良い意味でこちらの存在は気が付いてくれたようだ。

 営業で来ているのか、それてとも本気で来ているのかわからないが、情婦達はお目当ての男に誘いをかけている。



 「お譲さん方は見ない顔だ、他から来たのかい?」

 「ええ、妹と二人で旅してるの」

 「ええ!?この新世界を二人でかい!?」

 「はい」

 「こいつぁ驚いた」

 「ふふふ」



 マスターから問われる質問に答えながらも優子は、これからどうしようかと考えていた。

 ココでこれ見よがしに仲間になりに来たなんて言ってもただ胡散臭いと思われるか、敵かと思われるかのどちらかだ。

 これからどうしようと考えてチラッと隣を見れば、瞳は暢気にうつ伏せていた。

 船で旅してきたからと言っても、10時間は寝ている。

 いくらなんでも寝すぎだろうと思い、身体を揺すって起こそうとしたその時、近づいてくる気配に手が止まる。



 離れていても感じる熱。


 ハッキリとした、いっそ清清しさすらある存在感。

 来る。

 そう優子が思った時、大きな物音を立てて飛び込んできた人物。



 「ひっでーよ!!俺が寝てる間に飲みに行くなんて薄情だぞマルコ!!!!」

 「てめーが仕事サボッて寝てるのが悪いんだよぃ」

 「あーーーーーーー、美味そうなもん食いやがって!!!」

 「うるせー新入りだよぃ」


 突然の登場。

 ゆっくりと入り口へと視線を向けるとそこには間違いようのない、今回のターゲットであるポートズカ・D・エースがそこにいた。

 エースに声をかけられた男、同じく今回のターゲットである不死鳥のマルコも店の奥にいる。


 役者は揃った、さてどう動こう。


 そう優子が考えていたその時、マスター頼んでいた料理を運んできた。



 「おや、このお譲ちゃんは寝ちゃったのかい?せっかく美人に特別サイズの肉を焼いてきたんだが」



 マスターがそう言ってテーブルの上に乗せた絵に描いたような『マンガ肉』は確かにかなりの大きさだ。

 ルフィが食べるサイズのその肉に優子は顔を引きつらせる。



 「どうしたもんかね、君食べるかい?」

 「えっ!?いや……私はちょっと……」



 思わずイヤイヤと首を振ると、フワッと太陽の匂いが香る。

 何度も香った事のある安心できるその香が間近でして思わずドキッとする。

 ゆっくりと顔を横に向ければすぐ近くにエースの顔があった。



 「くわねーなら貰っていいか?」

 「えっ?」

 「その肉」

 「あっ」



 返答する前に既に掴んでいるその肉。

 優子はどうぞっと言おうとしたその時、肉を掴んだエースの手をガシッと掴む手。

 驚いてその手の持ち主をみれば、寝ぼけた顔をした瞳がジッとその肉を見ていた。



 「それ、私の」

 「くれよ」

 「だめ」

 「何でだよケチ」

 「ケチで結構、返せ」

 「もう、俺が貰ったもんだ!」



 いえ、あげるなんて言ってませんまだ。

 思わず心の中で突っ込む。

 だが、それどころではないと優子はすぐに椅子から立つと瞳の肩に触れる。



 『ひーちゃん!マズイっ!!』



 お肌の触れ合い回線、だが、返事はない。

 完璧に寝ぼけている瞳、優子はかなり慌てる。

 このままでは作戦がダメになると、エースの手から瞳の手を引き剥がそうとしたその時、エースの口がガブリッと肉に噛み付いた。



 「ヘッヘーーーン!もう食っちまった!!」

 「………殺す!」

 「ひーちゃん!!!!」



 思いっきりエースの手を引き寄せてすかさず腹に一撃入れる。

 勢いで店の外まで飛ばされるエース、自分の手に戻ってきた肉に瞳はガブリとかぶりついた。

 その行動に既に店内の雰囲気は最悪だ。

 エースが殴られた事で店内の空気が冷たくなる。

 まずいまずいと思い後ろから瞳を止めようと近づいたその時、店の外から凄いスピードで戻ってきたエースは思いっきり瞳に殴りかかった。

 瞳は持っていた肉をポイッと優子に投げ渡すとそのままエースへと飛び掛る。



 「やめなさい!!ひーちゃん!!」



 優子のとめる声も無視して思いっきりエースを背負い投げる瞳、エースも負けてなく女とか関係なく思いっきり瞳を蹴り飛ばした。

 勢いで店の壁にドンッとぶつかり穴を開けるがすぐに体制を直してエースへと飛び掛っる。

 エースも瞳に飛び掛った所で優子の怒りの雷が落ちた。


 「いい加減にしてよ、ひーちゃん!!」

 「やめろよぃ!」

 「痛っ!!」

 「いでーーーーっ!!!!!」



 ゴンゴンッと気持ちの良い音が二つ響く。

 店内は一気に静かになった。

 殴られた二人は各々出来たタンコブに触れて自分達を叱っている相手を見上げる。



 「やめてって言ったらすぐにやめて」

 「はっはい」

 「おめーは何やってんだよぃ!ココでは騒ぎを起こすなって言ったばかりだろぃ!」

 「すみません」



 ショボンとした二人を見て盛大な溜息をついた後、マルコは優子へと視線を向ける。



 「悪かったねぃ、うちのもんが」

 「いえいえ、先に手を出したのは妹ですから、本当にすみませんでした」

 「いや、エースのアホがあんた達の食い物に手を出したのが悪い」

 「そう言って頂けると助かります、ですが、手を出したのはこちらです、修理代はこちらで出しますから」

 「いや、それはいいよぃ」

 「いえ、させて下さい」



 そう言って優子は持っていたショルダーバックからベリーの入った袋を出しお店のマスターにそれを渡す。

 そして悪かった空気は仕切りなおしになり、カウンターで並んで座る事になった。


 瞳・優子・マルコ・エースの順に座って飲みなおす。



 「それにしても、女二人で旅とは凄いよぃ」

 「まあ、運よく無事でしたね」

 「腕はありそうだ、さっきのエースとの戦いもかなりのもんだったねぃ」

 「ですが、世界中を旅する夢の為とは言え、女二人旅はそろそろ限界ですね」

 「まぁ……」


 そんな夢持ってないじゃんっとテレパシーで言われて優子が笑顔を瞳に向ける。

 誰のせいでこうなったと思うの?みたいな事が笑顔に篭められていて瞳は視線を逸らしてうつむく。

 ガウガウと下品にもグラスの淵を噛みながら不満そうに瞳はプイッと顔を背ける。



 「妹はご機嫌斜めかぃ?」

 「えっええ……」

 「双子だが、そう言う所は似てなさそうだねぃ」

 「まあ……」


 マルコは優子の奥にいる瞳を見てクスッと笑う。

 そんなマルコを見て優子は、決まったかな?っと考える。

 フラグはどうやら既に立っているようだ。



 「うちホテル戻るわ」

 「ひーちゃん?」

 「どっかのそばかす野郎のせいで優子さんに怒られるし……そもそも気が付いたら拳骨ってどうよ?……フンッ!」


 寝ぼけてる間の事を覚えてないのは本当に達が悪いと優子は思う。

 瞳からすれば、寝て起きたら拳骨を食らっていたって言う状況なのだろう。

 確かにそれでは、不機嫌になっても仕方が無いとは思うが、実際はしっかり問題を起こしているのだからどうしようもない。


 「チビ女」

 「そばかす馬鹿」

 「なんだよこの野郎!」

 「野郎じゃねーよボケっ!!」

 「「やめなさい!/やめろよいっ!!」」



 再び取っ組み合おうとする二人を止めるマルコと優子。

 瞳はフンッと鼻を鳴らすとそのまま店を出て行った。

 優子はそれを見送った時、不意に瞳の後を追う様に外にいた数人が動いたのを見て目を細める。


 「ちょいと、お前さんの妹をホテルまで送ってるよぃ」

 「えっ?」

 「エースのせいで機嫌損ねたみたいだしねぃ」

 「それはっ」

 「安心しろぃ、ガキに盛る程若くねーよぃ」



 そう言って、マルコは背を向けて手を振ると店を出て行った。

 まさか、マルコが動くと思っていなかった優子は驚いたようにその背中を見詰めた。



 「どうした?」

 「えっ?」



 不意にいつの間にか隣に座ったエースに声をかけられて優子は視線を外からエースへと戻す。


 「ううん、ただ……マルコさんって素敵ですね」

 「うえっ!?お前も、マルコに惚れたのか!?」

 「ええ!?いやいや、そう言う訳では……」

 「マルコ、超女にモテるんだよ……本人興味ねーってスカしてんだけど。またそこがいいとかで……女ってわっかんねー」

 「そう……でも、貴方達は皆素敵な海賊だね」

 「はぁ?素敵なんて言われた事ねーよ!なぁ!!」



 優子の言葉に後ろを振り返りそう同意を求めると後ろで飲んでいた白ひげのクルー達は照りくさそうに笑いながら同意の声をあげる。

 それを見て思う。

 やっぱり素敵だと。



 「貴方はそっくりだわ」

 「そっくり?」

 「私の憧れる海賊の船長二人に」

 「憧れる海賊がいるのかよお前」

 「ええ、いるわ二人」

 「誰だよそれ?」



 不思議そうな顔でそうエースに問われて優子はその顔を見詰めて思い出す。

 何度目かのトリップは彼の父親がいた時代だった。

 その時代でその父親と愛し合った事だってある。

 だからこそわかる。

 やっぱり似ていると。


 「海賊王」

 「!!」



 優子の言葉に持っていたグラスを落として唖然と見詰める。

 そんなエースの反応に優子はゆっくりと割れたグラスを拾い集める。

 きっと毛嫌いしているだろう事は知っている、だけど、少しでもいい、あの人がそう思われている事だってあることを知って欲しい。


 「かっ……海賊王に憧れるって……お前馬鹿じゃねーのか?」

 「クスクス、そうかも。でも……ううん、今はいいや」

 「なんだよ?」

 「何でもないです、それに、貴方はもう一人にも似ているもの」

 「……」

 「貴方の所の船長さんに、だから……素敵ね」

 「!!!」


 優子の言葉に顔を真っ赤にして固まるエース。

 そんな事、言われたのは初めてだった。

 似ているといわれることがこんなに嬉しいとエースは知らなかった。

 そっと席を立とうとする優子をエースの手が止める。



 「?」

 「もう少し……付き合えよ?」

 「………はい」



 そっと座りなおす。

 フラグはこれで決まった。


 今回のトリップ、相手はエースそして瞳の相手はマルコだ。


 To Be Continued

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