Game
□初
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夕暮れの教室で小学一年生の入学式に一目惚れした人を前に、震える身体を叱咤して、噛みながらどもりながら何とか必死に気持ちを口にした。
9年間と言う人生の半分以上を思い続けている相手はとても困ったような顔でゆっくりと優しく返事をくれた。
「俺を好きだって言ってくれてありがとう……だけど、ごめん。君の気持ちに応えられない」
「ッ」
想いを伝える前からずっと見てきた相手、だからこそわかる。
その相手に別に好きな人がいる事。
それでも伝えずにはいられなかった。
最終進路を前に自分の気持ちに決着をつけなければと、何故か気持ちが焦った。
結果は初めからわかっていた筈なのに、どうしてこんなに苦しいのだろうか?
どうしてこんなに辛いのだろうか?
「来てくれてッ……返事を……してくれて、ありがとうございましたッ」
「………ごめんね」
再度もう一度謝られた後、彼は静かに教室から出て行った。
彼がいなくなった瞬間にその場に崩れ落ちるように座り込むと口元を手で覆い泣いた。
わかっていた事なのに、だけど、それでも、彼が本当に好きだった。
「好きッ……好きですッ……好き……ッ……幸村くんッ」
何度も何度も繰り返しそう呟く。
胸が苦しくて辛くて。
静かな教室の中に嗚咽が響く。
身体を自らの両手で抱え込みながら泣き続ける。
どれくらい泣いていたのか、先程まで夕日が差し込んでいた教室の中はすっかり薄暗くなっていた。
泣き疲れてボーッとする頭で帰らないと、っと立ち上がった瞬間、持っていた携帯がブルブルと震えた。
ビクッと突然の振動に驚きながら携帯を開く。
一通のメールを受信していた。
見たこともないようなアドレス、悪戯か何かの業者メールかと思い何気なく開いたメール。
【時計を見て下さい】
そこに書かれていたのは短文、何がなんだかわからない、だけど、何気なく教室の中にある時計へと視線を向ける。
時間は4:44を表示していた。
気味の悪い時間だった。
だけど、次の瞬間には意識が遠く。
あ、倒れる。
そう思った時に思い浮かんだのは大好きな人の大好きな笑顔だった。