Game

□弐
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 「大体の情報はこんなところか?」

 「この世界は異世界である事、脱出するには何処かにいるボスを倒してゲートから出る以外には方法はないということ。感染者はホワイト以外は治せず、1日以内にホワイトから治療を受けなければ感染者は化物に変わってしまう事。ココで化物になった者は元に世界に帰れない事、以上」



 判明している事は余りに厳しい現実だった。

 これは何かの間違いであってほしいと幸村は思うが柳が感染してから三時間、噛まれたのは左手小指付近だがそこから広がる紫色の痣は既に左腕全体に広がっていた。

 痛みもあるようで平気だと本人は言うが時折、苦痛に耐えるようなそぶりを見せている。

 そして、未だホワイトは見つかっていない。


 あれから校内を探したが見つかったのは各校のマネージャー達だけだった。

 幸村は体育館の端で同じマネージャー仲間達と泣きながら怯えている自分の学校のマネージャーであり自分の想い人である中村智子が無事であったことに心からホッとした。

 見つけた時は咄嗟に抱きしめてしまった。



 「負傷者もいることやし、早よぅ探さな危ないからココは私の出番やね」

 「小春?」

 「金色小春、ヘルプ使いまーす」

 【金色小春ヘルプ機能使用承諾】

 「そのホワイトちゃんは何処にいるん?正確な場所が教えられんにしても大体の場所を教えてくださいな」

 【回答。正確な場所はお答えできません。しかし、ホワイトは校内に未だ健在です】



 その回答に全員が顔を見合わせる。



 「むっ向日岳人だ、ヘルプ使うぜ!」

 【向日岳人ヘルプ使用承諾】

 「ホワイトは俺達と同じ人間なのか?もしかして、そいつも感染したりするのか?」

 【質問要綱が多すぎです、回答しかねます】

 「ケチクサッ!?あーーなら、ホワイトも感染した場合はどうなるんだ?」

 【回答。ホワイトは感染しません。ですが通常のダメージとしては受ける為に死亡する可能性がありその場合は、脱出不可能となりボスを倒してもゲートが出現しません】


 「それって……ヤバイんじゃない?」



 静かになった体育館内に芥川慈郎の言葉がやけに大きく響く。

 各校の部長と副部長が集まり自分達が見てきた校内の様子と体育館内にあったこの異世界のマップを広げて話し合う。

 まだ探していない場所は四ヶ所。

 時間はあまりない。


 「丸井に仁王と俺で図書室に行くことになった」

 「ぶっ部長!俺も行くッス!」

 「赤也……クスクス、そうだね、お前ならそう言うね……わかったよ、行こう」

 「ウス! 」

 「蓮二、必ず見つけてくるから」

 「ああ、期待して待っている」



 コツンと拳をぶつけ合い立ち上がる。

 握り締めるのは体育館にまるで用意されていたような自分達のラケットとボール。

 このボールで化物を倒す事が出来るらしく、何処までもゲームのようなソレに苛立ちが募る。


 「人の命までゲームにして……本当に……イラつくッ」

 「ゆっ幸村君……マジギレ?」

 「そっそうみたいやのぉ」

 「こぇえええ」


 何度か遭遇する化物をボールで倒しながら何とかたどり着いた図書館のある階、そこまで来たところで悲鳴が聞こえた。

 慌てて駆けつければ入り口に固まっている化物達。

 すぐさま切原がボールを何個も打ち込み化物を消していく。

 あらかた倒し終えて図書室のドアを開けて幸村は中にいた人物を見て思わず固まる。

 それは今日、自分に想いを告げてくれた子。



 「ふっ藤原さん?」


 幸村に声をかけられた少女はゆっくりと顔をあげて幸村を視界に入れると目を大きく開いた。

 随分泣いたのだろうその瞳は可哀想な程赤くなり腫れている。

 それは恐怖からなのか、それとも自分が告白を受けなかった事でなのかを考えれば答えは後者だろうと幸村は思い罪悪感を感じた。


 「お前さん一人かのぉ?」

 「はっはい」

 「何でココに?」

 「へっ変なメールが届いて」

 「俺達と同じっすね、あれ?アンタもしかして、アンタがホワイトっスか!?」

 「ホワイト?何ですかそれ?」

 「だよなぁ?まあ、とりあえずココは他には誰もいなみたいだし、またゾロゾロ集まってきたみたいだから一旦戻ろうぜ?」

 「そう……だね……うん、よし一度戻ろう」



 だが、今までこんなことはなかったのに図書室の出入り口にかなりの数が集まってきていた。

 思わず走るが運動部の足に女の子が着いて来れる訳もなく仕方なくその手を掴む。



 「辛いと思うけどもう少しだから、頑張って!」

 「はっはいっ!」



 ガタガタと震える手、それでも必死に走る彼女の姿に少しだけ好感を持てた。

 体育館につくとそれぞれの見てきたものや見つけてきたものを話し合う。

 家庭科室らしき場所は安全エリアらしく化物は体育館同様に入ってこなかった事、保健室もまた同じ仕様、校内の電気設備は使用可能だということ。


 そして新たな生存者、藤原優美。


 「ホワイトは見つからずか」

 「だな、けど……そもそもホワイトってどんなんなん?俺達と同じ人間やとしたら既にこの中にホワイトはおるって言う落ちやったりして?」

 「それは有り得るな」

 「確認するしかねーか」

 「跡部はまだヘルプ取っとき、俺が聞くわ」

 「忍足……」

 「忍足侑士や、ヘルプ希望するわ」

 【忍足侑士ヘルプ使用承諾】

 「ホワイトにはホワイトっていう証みたいなのがあんのか?どうやって確認したらええん?」

 【回答。ホワイトには証として桜の痣が身体の何処かにあります】

 「ってことらしいわ、各校確認するで?」



 忍足の言葉にそれぞれが確認を開始する。
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