Game
□九ノ壱
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体育館の二階から外を見上げれば薄気味悪い紫色のどんよりとした雲が空を覆っている。
日中でも薄暗いこの世界に太陽なんてものがあるのだろうかと疑問に思う。
この世界に来て9日が過ぎた。
何処かにいると言われているボスは未だ見つけられていない。
だけど、探索に向かったメンバー達の話では、確実にボスに近づいているのは間違いがないようでその証拠に現れる化け物達が変わり強くなってきているらしい。
探索してきた結果、どうにもこの街の中央にあるドーム型の建物が怪しいらしいが、入り口らしき扉は全部で4つ、その全てに鍵がかかっていて中に入れそうな場所は見つからなかった。
街の四方にある塔に鍵があるのだろうと踏んだメンバー達は総出で西側の塔に向かった。
本当は何か皆の手助けをしたい所だけど、自分が確実に足手まといになる事は明白。
ただ、この安全な体育館の中で待つしか出来ない。
願う事は皆の無事、ただその1つだけ。
『大丈夫、すぐに戻ってくるから』
出発前に見送りに出た優美の頭を幸村はポンポンと叩き微笑んだ。
こんな時に不謹慎だと分かっていてもドキドキした。
二人で会話したあの日から幸村と話機会は確実に増えた。
『あの告白の返事を撤回させて欲しい』
そう言った幸村の言葉は未だに耳に残る。
これは奇跡だと思った。
叶わないと思っていた。
もう見ている事も許されないのだと思っていた。
それなのに、あんな風に優しく微笑みかけてくれる日が来るなんて夢にも思わなかった。
自分の思いが通じた訳でも、両想いになった訳ではないけど、それでも幸せだった。