Game
□十二ノ壱
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GEMAの世界に来て19日が経過した。
時間が経てば経つほど、もう、元の世界に戻れないのではないかと、やけになる者達も出始めてきた。
「中心の塔にはやはり、東西南北の塔の攻略が必要なようだ」
「せやね」
「北塔は頭脳プレーが得意なメンバーが必要ですね」
「東はパワーが必要だな」
「西塔はオールラウンダーが良いと思う」
「南はダブルスメンバーが妥当だろう」
「19日かかって、やっと傾向が分かったのは、早いほうなのかな?」
「どうだろうな?」
「いくら外の時間が停止していると言っても、早くこんな場所から出たいのは皆同じ気持ちでしょう」
外の時間経過が無く、止まっていると知り全員がホッとしたのは言うまでもない。
だからと言ってのんびりする気はないにしろ、焦ってミスする事を考えると少しは気持ちが楽になったのは事実。
それぞれが発見した傾向等を話し合う部長会議、塔の攻略を始めて3日で各塔の特性を発見できたのは早い。
焦る気持ちを抑えてココまでやっときた。
「メンバー構成を各部で選出して午後の部長会議で発表しよう」
「そうだな」
「それでは解散」
会議が解散した後、色々纏めたノートを持って席を立った時、白石は不意に二階にいる優美の姿を見つけた。
階段を上がり優美に近づけは優美は心配そうにジッと視線は校門のほうへ向けられていた。
「藤原さん」
「あ、白石君」
「隣ええ?」
「はっはい、あ、もう部長会議終わったんですね」
「おん」
そっと隣に並んで同じように外を見つめる。
「何か心配事?」
「え?」
「いや、ジッと外を見とるから」
「あ……その、皆無事だといいと思って」
「みんな?」
「はい」
「みんなって……今日外に行く当番なんは四天宝寺やで?」
「??」
「………いや、ごめん。何でもない。おおきにな」
「??」
何を謝られたのか分からずにオロオロする優美に気にしないように言い白石は苦笑した。
自分の学校の生徒ではない、よく知らないだろう他校生。
それでも当然のように心配できるその気持ちを知る度に惹かれる。
彼女のせいで不幸になったなんて言うマネージャー達がいるのは悲しいが事実であり現実だ。
それは決して責められないし仕方が無いとも思う。
だけど、今ココにいるマネージャー達女子の中、何人が他校生の心配までしている子がいるだうか?
それを考えると、どうしても優美と他の女子達を比べてしまう。
少なくとも、そんな部分を見ている男子はいる。
それはきっと人間が一番惹かれてしまう部分ではないだろうか?
優しさ。
外見や身なりが整っていてもそれが無ければ駄目なのではないかとすら思ってしまう。
少なくとも、嫉んでいる女子達がそれぞれ想いを寄せている男子はそこを見ている。
「大丈夫や、アイツ等はそんなヘマはせんよ」
「う、うん。そうですね」
そう言っても彼女はそっと笑いまた心配そうに外を見つめた。
白石がそっと何か声をかけようとしたその時だった。
【四天宝寺中学校 負傷者1名負傷レベル1 早急にホワイトを探して治療してください】
優美の身体がビクッと跳ねた。
すぐさま真剣な顔で白石が体育館にいるメンバーへと二階から声かける。
「ウチの部員がケガしたみたいや、探しにいくから悪いけど手伝って欲しい!!」
下にいたメンバー達はそれぞれ声を上げて外へと行く用意を始める。
それを見て白石もすぐに下に行こうとしてハッとなり振り替える。
「藤原さん、ごめんッ」
「いっいえ!!早く、皆のところにッ」
「ほんまにごめんッ」
それだけ言って白石は急いで下へと降りていく。
それを見送り優美はそっと手を握り締めた。
『幾ら人助けでもさ、他の男とヤりまくってる女なんて、オレだっだら頼まれてもゴメンだね』
以前言われたその言葉が心に深く刺さってずっとズキズキと痛む。
優しくされたとか少しは女の子と意識してくれたのかな?と浮かれている場合ではなかった。
突きつけられた現実を改めて直視した。
否、分かっていたのに、考えないようにしていたのかもしれない。
自分でも思う。
色んな人と関係を持つ子なんか嫌に決まっていると。
だけど、嫌だと口になんて出来ない。
『もっと思った事を口にしていいんだ』
手塚君はそう言ってくれたけれど最後まで口に出す事は出来なかった。
それをすればもう誰も救えなくなってしまう気がした。
一度それを吐き出したら無理だと思った。
だけど、それを考えない訳ではない。
知らない人としたくない、好きな人以外は嫌だ。
彼以外、幸村以外は嫌だとハッキリと言えるのに、言葉に出せない。
元の世界に戻る為に必死に戦っている彼等を見ていると、それだけは口に出したら駄目だと思わずにはいられなかった。
自分は絶対に彼の恋人にはなれない。
今だけの関係。
ココを出ればきっと他者と複数関係を持った子としてのイメージしか無くなる。
ホワイトとしての価値がなければ自分は彼の特別になんてなれないのだから。
だから、拒絶の言葉を口にすれば、その今の特別な価値すら無くなる。
それが嫌で言えない。
それがきっと自分の本心なのだと気が付く。
皆が頑張ってるから助けたいと思う。
だけど、それは確かにある気持ち、けど、口に出さない根本的な理由はきっと後者だ。
こんな子きっと彼には相応しくない。
その事実が余りに重くて優美はその場に座り込み声を殺して泣いた。