幸せのカタチ
□第十話
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そっと身体を幸村の後ろへと引く。
これがささやかな抵抗だ、こんな隠れる場所のない所でこんな事をしても無駄だと分かっているけど、そうせざる、終えなかった。
まさか、こんな場所に跡部が来ているなんて想像もしなかったから。
「警備から通報を受けて様子を見に来てみれば、一般常識もわからない駄目男がナンパか?」
「なっ、なんだと!?」
「女一人もまともに口説けないような男はナンパなんかしてんじゃねーよ」
君は本当に中学生なのか!?
思わず突っ込みを入れてしまそうな台詞、だけど跡部が言うとやけに説得力も効果もある。
本当に末恐ろしい子だ。
「君は氷帝学園の・・・・・確か、跡部君だったかな?」
「アーン?お前は立海の幸村。なんでこんな所に?」
「部が休みでね、友人と息抜きに・・・・それより、ココは君の?」
「ああ、そうだ」
ヤバイ、非常にヤバイ。
まだ気がつかれていないけど、こんな所で会うわけにはいかない。
幸い、跡部の注意は今幸村に向いている、ならば今のうちに・・・・。
「おいガキっ!俺達を無視してんじゃねーよ!!」
「調子にのるなよ!」
ちょっ、私の隣でそんな声を出さないでもらいたい!!
慌てた時には既に遅かった。
「なっ・・・・優美」
「えっ?」
跡部の口にした名前は当然の私の名前で、跡部が私を凝視しながら口にしたものだから私を呼んでいると指している。
だけど、ココで面倒は避けたい。
視線をキッっと跡部に向ければ一瞬目を見開き瞬きするとすぐに視線を私の手へと向けて表情を険しくする。
「下手なナンパした挙句に・・・・女に暴力たぁ、いい度胸だな」
「なに!?」
「悪いが、二度とこの場所に立ち入るな。おい!コイツら連れて行け」
跡部がそう言うと、何処からともなく警備員達が駆け寄ってきて男達を連れて行ってしまった。
残された私達はただ、それを呆気にとられボーッとみていることしかできなかった。