幸せのカタチ
□第十一話
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「やあ優美、おはよう」
本日から夏休み、時計を見れば予定よりも三時間も早い朝の6時だこの野郎。
今日はのんびり起きてまったりと爽やか(?)に過ごす予定だったのに、目の前にいるこの男のせいで気分は急降下、最悪だ。
「やだなぁ、そんなあからさまに嫌そうな顔をしないでくれないかな?傷ついちゃうよボク?」
「それで?何の用よ」
「あれスルー?相変わらず酷いなぁ優美は」
「さっさと用件言って」
「やれやれ」
この目の前にいる、と言うか寝ている私を覗き込むようにして宙に浮いている一見優しそうな面持ちをした詐欺男は、私をこの世界に連れて来た時空の神とかいう胡散臭い元凶の人物である。
笑っているのに笑っていない怖い男。
「単刀直入に言うけど、あっちの世界での君の存在が消失した事を知らせにきたよ」
「!?」
「あれあれ?ボク言っておいた筈だけど、もしかして忘れてた?」
最悪だ。
確かにここに連れてこられた時にその話は聞いた、聞いたけど。
「あ、もしかして・・・まだ、元の世界に戻れるとか思ってたりした?」
「ッ」
本当に嫌になるこの男。
楽しそうに笑いながらベットに腰掛ける。
綺麗な容姿が逆にこの男の冷たさを現れている気がした。
「もう一度言っておくけど、一度時空を越えた人間は元の世界には戻れないよ?」
「・・・・私が望んでココに来た訳じゃないわ」
「あはは、確かにそうだね」
「なんで・・・・なんで私だったのよ」
「んー・・・・君が他の子と違って面白かったから」
その瞬間、身体を起こして男に向かって平手をしようとした、が、その手はあっけなく男に受け止められる。
悔しくて相手をキッと睨めば更に嬉しそうな顔で男は笑った。