幸せのカタチ

□第十七話
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 この炎天下の中、何が悲しくて私はこんな場所に来ているのだろうかと今更ながらに泣きたくなった。

 外は灼熱の太陽が照らしている、自室のクーラーの効いた部屋でのんびりまったり過ごしていた私の安息を潰してくれたのは一本の電話だった。


 『部で必要な書類をリビングに忘れてきた、悪いが持ってきてくれないか?頼む』


 跡部から掛かってきた電話で気分は一気に急降下。

 自分で取りに来いと言おうにも跡部らしくもなく、部活が始まってから気がついたらしい。

 簡単に取りにこれないのが東京と神奈川の距離。

 こんな事の為に跡部の家の人間を使わせる訳には行かず、こうして仕方なく書類を持って来たのだけど・・・・。


 強い日差しの中だけでも気分は重いのに、目の前にはフェンスに群がる女子の姿。

 まるで砂糖に集る蟻のようでもあり、その声援は夏の蝉も顔負けの騒音だ。

 よくもまあ、こんな騒がしい中で集中して部活が出来るものだと関心してしまう。


 しかし、困った事が発生。


 近づけない、否、近づきたくない。



 「選択その@帰る、選択そのA黙って帰る、選択そのB速やかに帰る、どれにしよう」

 「ぶはっ、全部一緒だC〜」

 「!?」


 唐突に聞こえてきたのは語尾が特徴的な言葉。

 そして、そんな喋り方をするテニキャラを一人知っていて・・・・。

 ギギッと音がしそうな感じで振り返ればそこには、いてほしくない人物が未だ笑いながらそこにいた。


 ヤバイ。


 「君面白いC〜、なになに?誰かのファンなの?」

 「え?いや、そういったものではないです」

 「あはははは、やっぱり面白いC〜」


 いやいや、まてまて、今の何処に面白い所があったのだろうか?

 ペースはすっかり彼、芥川慈朗のペースだ。
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