Game

□弐
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 どうしてこんな事になったのか優美にはサッパリだった。


 気がついたら知らない図書室らしき場所に自分は倒れていた。

 窓の外は見た事もない景色、そして何より入り口の外にワラワラといた気味の悪い化物達。

 怖くて悲鳴を上げた時、助けに来てくれたのは大好きな幸村だった。

 振られたばかりで気まずいとかそう言う事よりも心からホッとした。

 連れて来られた体育館の端、自分だけが部外者のようで座りジッとしていた。

 視線を上げれば見たくないものが見えてしまうから。

 大好きな人の傍にはお似合いの綺麗なマネージャーの姿、そしてそれは好きな人の想い人。

 傍から見ても二人が両想いなのは一目瞭然。

 ますます居づらい。


 「藤原さん」

 「………」

 「藤原さん?大丈夫?」

 「はっはい!?」



 不意に声をかけられて優美は身体ビクッとさせて声がしたほうへと視線を向ける。

 屈むようにしてこちらを見ていた幸村に優美は真っ赤になりながら視線を彷徨わせる。



 「藤原さん、その……今、さっき話したホワイトを探していてね、この中にいる可能性があって身体にその印の桜の痣がないか探しているんだけど、藤原さんも自分のその……探してみてもらっていいかな?」

 「はっはい!」



 幸村に言われて優美は手始めに手足を見てみるが見当たらない。

 マネージャー達が体育館内のステージ下の倉庫で確認中と聞きそこに向かう。

 スタイルがよく綺麗な子達ばかりだと少し劣等感を感じながらも優美は着ていた制服をゆっくりと脱いで確認していく。

 そして不意にシャツのボタンを外している手が止まる。

 視界に入ったのはブラの隙間。

 見慣れないものがあった。

 おそるおそるそのブラを少しだけずらしてみるとそこには綺麗に桜の痣がハッキリとあった。


 血の気が引く。

 何で、どうして自分なのだろうかと。

 そしてよくよくホワイトが何かを先程聞いた記憶を辿る。

 困ったように辛そうに感染した仲間を早く助けたいのだと好きな人が言っていた。

 その瞬間、優美は着替え途中なのも気にせずバタバタと倉庫から飛び出す。

 前の肌蹴た格好で出てきた優美に頬を染めて視線を逸らす者達を気にせず優美は幸村の前に急いだ。


 「ふっ藤原さん!?」

 「おっお前、なんて格好で!!」


 下着が見える程開いたシャツに思わず目をさらす真田と幸村。

 だけど優美はそんなことよりもと急いで幸村の前に立つ。



 「何をしたらいいですか!?」

 「えっ?」

 「私なにをしたらいいですか!?」



 優美の言葉に困惑している幸村に優美はスッとブラを少しだけずらしてその痣を幸村に見せた。

 幸村の目が大きく見開かれる。

 優美は再度同じ言葉を繰り返した。



 「幸村精市、ヘルプ使用を申し出る!」


 【幸村精市ヘルプ使用承諾】


 「ホワイトはどうすれば感染者の治療する事ができるのか!」


 【回答。ホワイトが治療する方法は一つ。性交渉を持ってして感染を浄化できます】

 「は?」



 それは誰の言葉だっただろうか。

 全員がその言葉を理解できなかった。

 言われた優美本人もキョトンとした。



 今なんと言われた?


 性交渉?


 「そっそれ以外の方法は!?」

 【ありません】

 「そんなっ」



 再度、沈黙が訪れる。

 重たい空気。

 それしか方法がない、困っているのは大好きな人。

 自分が少し我慢すれば一人の命が救われる。

 悩む理由はない。

 それでも、震えてしまう手を叱咤して優美は幸村へと視線を向ける。

 その視線で優美が何を言おうとしているのか理解して幸村はその手を取り急いで体育館の隅へと移動する。



 「藤原さん、ごめん」

 「いっいいんです、大丈夫です」

 「本当にごめんっ」

 「そんな、私なら本当に大丈夫なので」



 大丈夫な訳がなかった。

 どうみても真っ青な顔でガタガタと震えている身体、それは当然そういう経験がないことを意味している。

 それはなんら自分達の年齢ではおかしくなくむしろ普通の事。

 グッと考えて幸村は顔をあげる。



 「初めて……俺で良かったら相手になる」

 「えっ!?」

 「こんなのは君に対して侮辱になってしまうかもしれないけれど、それでも、まだ君が俺の事を思ってくれているなら初めての相手は俺がなるよ、だから……蓮二を助けてほしい」

 「そっそんなッ」

 「俺には君にこんなことしかしてやれる事がない、ごめん」



 ガバッと頭を下げられて優美は困惑する。

 だけど、こんなことがなければ二度とない事。

 甘えていいのだろうかと考えてしまう。

 そんなこと幸村がしなくてもいいのにと本当はいいたいのに、現実は余りに辛い事実を突きつけて、それには時間がなく悩む時間はない。


 「幸村君はいいの?私なんか……」

 「ああ」

 「………ぉねがいします……」



 その小さな声に幸村はそっとその手を握ると事情を聞いていた跡部達が複雑そうな顔で保健室前までの護衛を買って出てくれた。
 
 To Be Continued
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