幸せのカタチ

□第五話
2ページ/6ページ

 
 「何・・・・してんのよっ・・・・・」

 「うるせっ」

 「子供のくせに」

 「お前だってガキだろうが!」

 「私は違うわよ!一緒にしないで!」

 「ハッ・・・・俺様の方が大人だな」
 
 「何よっ・・・・・何よっ・・・・さっきまではあんたの方が泣きそうだったくせにっ」
 
 「なっ、俺様がそんな軟なわけねーだろ」
 
 「泣いてたくせに」
 
 「てめっ」


 
 媚びることなく真っ直ぐに見られたのは初めてな気がした。
 
 暫くすると先程までの天気が嘘のように雨が降り出す。
 
 急いで荷物を纏めていると、女がこちらを見て口を開く。



 「家ここから近いけど、雨宿りする気があるなら入れてあげるけど?」
 
 「・・・・・フッ、どうしてもって言うなら行ってやらなくもねーな」
 
 「うん、バイバイ」
 
 「おいっ!」
 
 「ふんっ」

 
 そのまま背を向けて歩いていく女を慌てて追う。
 
 本当に自分の周りにいないタイプの女だ。
 
 女の言う通り、そう離れた場所ではない所にマンションがあった。
 
 俺様程とは言えないがそれなりの家らしい事は、中に入ってすぐ思った。


 
 「適当に座ってて、コーヒーと紅茶があるけど・・・・・どっち?」
 
 「入られるのか?」
 
 「あんたの口に合うかわからないけど、ココにもそれなりの物があるみたいだから大丈夫だと思うけど?」
 
 「みたいって自分の家なのにわからないのか?」
 
 「・・・・・・最近ココに越して来て、ココにあるものは・・・・親戚?らしき人が用意したものだからまだ自分でも把握できてないのよ」
 
 「親戚なのに疑問系って可笑しくないか?」
 
 「・・・・・あんた一々五月蝿い」
 
 「なっ!?・・・・親は?」

 
 その時、それは禁句なのだと感じた。
 
 お茶の用意をしていた手を止めた女の顔は明らかに歪んだ。



 「さあ・・・・・死んでんじゃない?」

 「・・・・・・お前」



  何となく、泣いていた理由はコレなんだろうと思った。
 
 インサイトなんて使わなくても分かる程、辛そうな顔で吐き捨てるように言う。
 
 自分の親の事なのに知らないと言う。
 
 コレがコイツの言う、許容範囲を超えた状況と言うやつなんだろう。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ