幸せのカタチ

□第十六話
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 彼女の部屋を後にしてエレベーターで降りたマンションのロビー、柳に言われて向けた視線の先にはたった今車から降りてきた跡部がいた。

 何で跡部がココにと考えた時、頭に浮かんだのは遊園地での二人の様子。

 胸がモヤモヤしてくる。


 「アーン、何でお前等がココにいるんだ?」

 「やあ、遊園地以来だね、跡部」

 「俺様の質問に答えやがれ、何でお前等がココにいやがる」


 相変わらずの俺様ぶりだ。

 だけど、質問したいのはこちらの方だ。

 何故、ココに跡部がいる?


 「君のほうこそココになんで?」

 「・・・・・フッ」


 その瞬間、跡部はこちらを見て笑った。

 ゆっくりと俺の隣を通り過ぎると、入り口に立ち壁にある機械を慣れた手つきで操作する。


 「俺だ、開けろよ」


 それだけの会話、なのに跡部が尋ねた部屋が彼女の部屋な気がした。

 たった今自分達が出てきた出入り口の扉がゆっくりと開く。

 跡部はその中へと入りエレベーターに乗るとこちらをジッとみてきた。

 その視線はあの遊園地で彼女を傷つけた男達に向けたソレと同じ。


 「幸村、お前には渡さねーよ」

 「何の話かな、それは」

 「自覚がねーなら関わるな、あるなら・・・・諦めな」

 「それは・・・出来ないって言ったら?」

 「        」

 「跡部、今なんて」



 微かに動いた口、跡部がなんて言ったのか聞き取れなかった。

 こちらの返答に答える事なくエレベーターの扉が閉まる。

 上っていくエレベーター、止まったのは彼女の部屋のあるあの階。



 「『アイツは俺のモノだ』とはのぉ、言うてくれる」

 「えっ?」


 言われた言葉に振り返れば不機嫌そうな顔で仁王が立っていた。

 ジッとエレベターの止まった階を見つめた後、仁王はさっさと歩いていく。


 『知れば軽蔑されてしまう関係』


 彼女は辛そうな顔で確かにそう言った。

 いい関係ではない、だけど無関係ではない。

 考えるだけで胸がざわつく。

 現在の時刻は8時になろうと言う時間、とても遊びに行く時間とは思えない。

 なら跡部は何しに彼女に会いにきたのか。


 「精市?」

 「・・・・」

 「どうした?」

 「いや」


 そっとマンションから出て、彼女の部屋があるだろう階を見上げる。

 一人暮らしの彼女の部屋に慣れた様子で向かう跡部の姿が頭に焼きついて離れない。

 出遅れた気分でたまらなくイライラした。
 
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